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トヨタ社長が怯える、赤字転落→辞任シナリオ…致命的戦略ミスで急速に収益悪化

  • 2017年 05月18日 06時13分
  • 提供元:Business Journal
トヨタ、5年ぶり減収減益(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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トヨタ、5年ぶり減収減益(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「今回の決算は、為替の追い風も向い風もないなかで等身大の実力が素直に表れたもの」(トヨタ自動車・豊田章男社長)


 トヨタが発表した2017年3月期連結決算は、5期ぶりに減益となった。今期(18年3月期)も2期連続で減益となる見通しで、持続的な成長に黄信号が灯っている。経営を取り巻く環境の想定外の変化や戦略ミスが要因だ。規模が巨大化していることから、状況の変化で一気に赤字転落した過去が脳裏をよぎる。自身が「赤字」を理由に前社長を追い落としただけに、豊田社長の危機感は強い。


 トヨタの17年3月期決算は、ダイハツ工業や日野自動車を含むグループ新車販売台数が前年同期比1.6%増の1025万1000台と微増だったものの、円高が推移したことによる為替換算の影響などで、売上高は同2.8%減の27兆5971億円と減収だった。収益でも為替差損や諸経費の増加が原価低減や新車販売増による増益効果を打ち消し、営業利益は同30.1%減の1兆9943億円と、大幅減益となった。


 前期の業績で最も気になるのが、トヨタにとって利益の源泉である北米市場の変調だ。北米の新車販売は同0.1%減の283万7000台とほぼ横ばいだったにもかかわらず、営業利益(スワップ取引などの評価損益を除く)は、同34.6%減の3309億円と大幅減益となった。北米の営業利益率は前年度実績と比べて1.4ポイントダウンして3.2%にまで低下している。


●戦略ミス


 北米の収益が悪化しているのは、市場の競争激化とトヨタの戦略ミスが背景にある。中国に続く世界第2位の規模を持つ米国の16年の新車市場は、前年比0.4%増の1755万台と、微減ながら過去最高を更新した。しかし、17年に入ると1月から4月まで4カ月連続で前年割れが続いており、ピークアウトが鮮明だ。16年後半から信用力の低い低所得者へのサブプライムローンの比率が上昇、自動車メーカーの「販売奨励金(インセンティブ)によって市場がつくられている」(マツダ)状況だ。すでにインセンティブは過去最高水準にあるものの、在庫水準も積み上がっている。


 増え続けるインセンティブによって米国事業の収益が悪化しているのは、自動車メーカー各社で共通している。ただ、トヨタの場合、他社よりも厳しい状況に置かれている。米国市場ではSUVやピックアップトラックが人気な一方、セダン系乗用車の販売が不振。トヨタはセダンを主力としていることもあり、収益率が大幅に悪化している。さらに乗用車系モデルは中古車市場でも不人気で価格が軟化しており、トヨタは金融事業でも残価コストの増加で大幅減益を余儀なくされている。


 満を持して投入したトヨタ車の顔であるハイブリッドカー(HV)新型「プリウス」の販売が一向に盛り上がらない。セダン系モデルが不人気なのに加え「ガソリン価格が下落して、HVに誰も振り向かなくなっている」(自動車メーカー)。トヨタでは「SUVとピックアップトラックの供給能力を増やして、過度なインセンティブ競争に陥らないように適切にコントロールしたい」(トヨタ・永田理副社長)としているが、時すでに遅しといった状況だ。


 自動車メーカーに一定台数以上の環境対応車販売を義務付ける米国カリフォルニア州の環境規制は、18年から段階的に強化される予定だが、新しい制度からHVは環境対応車として認められなくなる。環境対応車としてHVを最も重視してきたトヨタの戦略ミスを露呈したかっこうだ。


●強い危機感


 今期の業績見通しは、グループのグローバル販売台数を16年度とほぼ横ばいとなる1025万台を見込む。このうち北米は、同市場で主力モデルである「カムリ」をフルモデルチェンジするにもかかわらず、同0.6%減の282万台とマイナスを予想する。


 収益面でも引き続き米国のインセンティブ増加などによる収益の悪化で、全社の営業利益は同19.8%減の1兆6000億円と大幅減益を予想する。営業利益率は前期と比べて1.4ポイント悪化して5.8%にとどまる見通しだ。豊田社長は「2期連続の減収減益はスポーツの世界でいえば連敗になる」と述べ、トヨタの業績が縮小することに危機感を示す。


 トヨタは、年間新車販売が「1000万台を超え、大きくなりすぎたことが問題」(豊田社長)としている。組織や人員規模が巨大化したトヨタは、リーマンショックによる金融危機で市場環境が急変すると一気に効率が悪化、うまく対応できないまま09年3月期に59年ぶりの赤字に転落した。


 豊田社長が2期連続の減収減益に強い危機感を抱くのは、こうした市場環境の急激な変化に巨大化したトヨタは対応できないからだ。特に自動車産業は、米テスラなどの新規参入や、グーグル、ウーバー・テクノロジーズなどの米IT大手が存在感を高めている。「パラダイムシフトが求められており、AI(人工知能)自動運転、コネクテッドなどの新しい領域が重要なカギを握る」(豊田社長)と、トヨタといえども勝ち組であり続けることは簡単ではない。


 前回赤字転落した際、社長だった渡辺捷昭氏に全責任を負わせるかたちで辞任させ、豊田氏が社長に就任した。「仮にトヨタが再び赤字転落したとき、今度は自分が社長の座を追われることをもっとも懸念している」(経済ジャーナリスト)という。当面、減収減益予想をいかに挽回できるかにかかっている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)



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