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アサツーディ・ケイ、「計画的」上場廃止か…筆頭株主と泥沼紛争

  • 2017年 10月12日 06時05分
  • 提供元:Business Journal
ADK・植野伸一社長(アフロスポーツ)

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ADK・植野伸一社長(アフロスポーツ)

 広告業界第3位のアサツーディ・ケイ(ADK)は、筆頭株主の世界広告首位の英WPPと対立、米投資ファンド、ベインキャピタルがホワイトナイト(白馬の騎士)として参戦した。三つ巴の攻防が繰り広げられることになる。


 ADKは10月2日、WPPグループとの資本提携関係を解消すると発表した。提携開始から20年が経過したものの協業の具体策を見出せず、シナジー効果を発揮できなかったためだという。同日、ADKはベインの買収提案を受け入れ、株式を非公開にすると発表した。


 ベインはADK株式のTOB(株式公開買い付け)を実施。1株当たり3660円で買い付ける。9月29日のADK株の終値を15%上回る価格で、総額は最大で1517億円に上る。買い付け期間は10月3日から11月15日までで、ベインはADK株の100%取得を目指しているが、TOB自体は50.1%以上の応募があれば成立する。東京証券取引所第1部に上場しているADKは、TOB後に上場廃止となる。


 WPPのADK株保有比率は24.74%(6月中間期時点)。ADKもWPP株を2.43%保有しており、提携関係の解消に伴いWPP株をすべて売却する方針だ。


 ADKは14年以降、円満なかたちで提携の解消を目指していたが、日本での足がかりを失いたくないWPPは首を縦に振らなかった。両社の対立が激化するなか、ベインがホワイトナイトとして登場。ベインがTOBを実施してADK株を非上場とするスキームを提案した。ADKはベインの100%子会社になり、WPPに退場してもらう。いったん上場廃止にした後、3年後をメドに再上場し、ベインは投下資金を回収するというシナリオである。


 WPPはADKの一連の動きに猛反発。共同通信のロンドン発の記事(10月3日付)は、「WPPグループはTOBに応じるつもりはない。WPPはベインの提案した買収価格がアサツーの株価を『ひどく過少評価している』と判断した」という英フィナンシャル・タイムズの報道を引用した。


 続いて第2位株主の英運用会社、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズが10月4日、ベインによるADK買収に反対すると発表した。WPPと同様に、ベインが提示したTOB価格が著しく安いと主張している。シルチェスターグループはADK株の17.11%を保有している(6月中間期末時点)。


 TOBの成立には50.1%以上の株主の応募が必要だ。筆頭株主のWPPと2位株主のシルチェスターの合計で41.85%を保有する株主がTOBを拒否したことになる。


 監理銘柄になったADK株は、10月6日の終値が3850円だった。TOB価格の3600円を7%上回った。年初来高値は10月5日の3980円で、10年ぶりの高値だ。ベインがTOB価格を引き上げないと50.1%以上の応募は厳しいのではないかとの指摘が出ている。


 TOB価格の引き上げを期待する買いが、今後も入る可能性は小さくない。なお、年初来安値は5月30日の2689円で、10月5日の高値と比較すると株価は5割近く上昇した。ベインはTOB価格の引き上げやTOB期間の延長を迫られることになる蓋然性が高まっている。


●ADKはネット広告で出遅れた


 ADKは1999年に旭通信社と第一企画が合併して誕生した。旭通信社を一代で築いた稲垣正夫氏は広告業界の有名人だ。「全員経営」を標榜し全社一丸の猛烈営業で急成長を遂げ、1987年に広告会社として初めて株式公開を果たした。テレビのアニメ番組の広告に特化して「アニメのアサツー」と呼ばれた。


 第一企画との合併で電通、博報堂(現・博報堂DYホールディングス)に次ぐ第三勢力の地位を盤石にした。同時にADKはWWPと資本・業務提携し、20%の出資を受け入れた。


 ADKの誕生およびWWPとの資本提携の立役者だった稲垣氏は15年4月、心不全のため92歳で亡くなった。


 企業規模を拡大し外資の後ろ盾を得て攻勢に出ようとした矢先に、最大顧客の三菱自動車を失った。リコール隠し問題に揺れる三菱自は、広告費を大幅に削減。ADKは2001年に主要広告会社から外された。さらにドル箱だったアニメ番組の広告枠の採算が悪化していく。


 ここからADKの苦難が始まる。経営効率を優先するWPPと、広告主へのきめ細かいサービスを重視するADKの間に亀裂が深まった。


 ADKの17年12月期の連結業績は、売上高が前年同期比1%増の3547億円、営業利益は同12%増の62億円、純利益は同2.3倍の55億円の見込み。前期に出版子会社、日本文芸社を売却したことに伴う事業整理損が、今期はなくなり最終増益となる。中期経営計画では70億円の営業利益を目標に掲げているが、17年12月期には届きそうもない。


 日本の広告市場は大きく変わった。16年の広告市場はインターネット広告費が前年比13%増と、3年連続で2ケタ成長を遂げた。ADKはWPPとの関係を断ち、立ち遅れているネット広告に注力して収益力を高めることにしたとみられる。


 ベインのTOBが成立して、ADKは上場廃止にこぎつけることができるのか。TOBが不成立になれば、ADKの経営陣は総退陣に追い込まれる可能性が高い。


 ADKの植野伸一社長は、「今回の非上場化を新創業と位置づけたい」と語っているが、ベインのTOBに賛同したADKの経営陣は創業以来、最大の正念場を迎えている。
(文=編集部)



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