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豊田真由子が味わう「人間の本性むき出しの」ドブ板選挙…えげつない中傷&選挙妨害合戦

  • 2017年 10月13日 05時45分
  • 提供元:Business Journal
選挙活動を行う前衆議院議員の豊田真由子氏(写真:日刊現代/アフロ)

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選挙活動を行う前衆議院議員の豊田真由子氏(写真:日刊現代/アフロ)

 衆議院議員選挙が始まった。メディアは「安倍vs.小池vs.枝野」という構図で各党の獲得議席数を予測しているが、日本の政治に期待を持てない無党派層は「あいつは受かるか?」などと注目議員の当落を予測していることだろう。


 今回、全国から興味津々の視線を注がれているのは、やはり「このハゲー!」で自民党を離党した豊田真由子氏や、不倫問題で民進党を離党した山尾志桜里氏などだろう。いずれも、「これまでにない“ドブ板選挙”に徹する」と報道されている。


●「金に汚い」「品のないババァだ」


 ドブ板選挙とは、「地元をくまなく回って票を稼ぐ、もっともポピュラーな選挙戦術」である。実は、筆者はドブ板選挙を得意とする政治家(仮にA先生とする)の選挙対策本部の一員として、選挙戦にかかわった経験を持っている。


 主な役目は、選挙カーの運転、駅前演説の補助(選挙用ジャンパーを着て幟を持ち、A先生の脇に寄り添う)、選対本部での支持者対応、A先生とともに地域を回る……など、選挙期間中はぶっ通しでA先生を支援する。基本的には、完全ボランティアだ。


 選挙運動というのは、始めるとクセになる。特に、普段はかかわらないような人たちと触れ合えるのは非日常の体験であり、楽しみのひとつだ。しかし、それ以上に“人間の裏側”を垣間見ることができるのがおもしろい。


 たとえば、選挙カーの運転中にほかの候補者とすれ違ったときのことだ。A先生は笑顔で手を挙げながら、隣でハンドルを握る私に「あいつは金に汚いんだよ」「ヤツは酒癖が悪くてなぁ」「ホント、品のないババァだ」などと、聞いてもいないのに教えてくれる。基本的に議員同士は「全員が敵」であり、心底仲良くなることなどめったにないのだ。


 また、握手したばかりの支持者に対しても「昔はかわいかったのに、今はあんなおばさんになって」などと、自分を棚に上げて評することもあった。そんなA先生だが、実は選挙カーに同乗することはほとんどない。なぜなら、有力支援者たちに頭を下げてまわっているからだ。


 仮に当選ラインが1000票だとすると、1000人に頭を下げるよりも「10票持っている人100人」「20票持っている人50人」から支持を得るほうが効率的であり、候補者はそのために腐心する。この動きがさらに大きくなると、いわゆる「組織選挙」となるわけだ。


 選挙期間中はフル回転する選挙カーだが、評判は決して良くない。街中で「うるさい!」と怒られたり、手を振ってくれるのは小学生だけという日もあったりする。それでも選挙カーを走らせるのは、有権者に「必死に選挙運動をしている」とアピールするためだ。


 A先生は「選挙カーはプラスには作用しない。マイナスを防ぐためだけにやるもの」と語っている。ドブ板選挙においては、確かにその通りかもしれない。ちなみに、A先生は中古の軽ワゴンを選挙カーとして利用している。「ボロいほうが、少ない予算でがんばっているように見える」のが、その理由だ。


●美人を武器にする候補者の“驚愕テク”


 候補者が地元の支持団体を回っていると、当然ながらウグイス嬢と2人きりになる。ウグイス嬢が美人女子大生だったりすると「若いコとドライブ気分」を楽しむこともできるようだ。


 しかし、なかには漢字が苦手なウグイス嬢もいるようで、「積極的売買を促進します」と言うところを「せっきょくてきばいしゅうをそくしんします」などとマイクで叫び、隣で聞いていた私は「そんなことをしたら、即パクられるよ」と大笑いしたこともあった。


 さて、向こうからライバル候補がやってきたときのこと。そのウグイス嬢は「○○候補のご検討をお祈りします」などと心にもないセリフを吐いた直後、マイクのスイッチを入れたまま「今のオバさん(候補者)、すごい厚化粧ですね~」と運転中の私に話しかけてきた。タイミングが悪いことに、人が多い駅前の交差点で停車中。その瞬間に、数十票は失った。


 筆者のような応援者にも、ひそかな楽しみはある。若い美人のライバル候補が駅前で有権者と握手をしていたら、私も選挙用ジャンパーを脱いで支持者のふりをして握手する。選対本部の仲間のなかには、嫌がらせのために鼻をほじった手で握手する輩もいたようだ。


 しかし、敵もさるもの。胸元が開いたスーツでお辞儀をしたかと思いきや、握った手をさりげなく胸の近くに寄せてくれることもある。自分の“武器”を最大限に利用しているということだろう。


●中傷ビラがばらまかれる選挙妨害の実態…


 選挙カーの運転を終えて選対本部に戻ると、食事が待っている。寿司や天ぷらなどが出た昔と違い、今は仕出し弁当だが……。また、選対本部には近所の暇なおじさんがやってくることもある。そして、その全員が支持者とは限らない。


 ライバル陣営に詳しいとなると、こちらは警戒する。なぜなら、ライバル陣営でもこちらの情報を話している可能性があるからだ。敵か味方かわからないものの、邪険にはできない。そのため、選対本部長から「(ライバル候補の)悪口禁止例」が出ることもある(ちなみに、このような“風見鶏”は地元の商店主であることが多い)。


 一番困るのは、どこからともなく現れる“怪しげな占いおばさん”だ。「明日は紫のネクタイをしろ」「神棚の方角を変えろ」などと言っているうちは笑顔で対応もするが、言うことを聞けば聞くほど調子に乗っていき、挙句の果てに「明日は15時に××市をまわりなさい」などと言ってくる。


 その占いおばさんが支持者などを紹介してくれるわけでもなく、単なる思い付きにすぎない。しかも、本当にその地域をまわったかどうかを確認するので手に負えない。


 また、選挙といえば妨害も付き物だ。あるとき、ライバル陣営がA先生の中傷ビラをせっせとまいていることが判明した。露骨な選挙妨害である。我々はA先生と支持者数名だけの“秘密会議”を開き、その選挙妨害を逆手に取る方法を話し合った。その結果、うまく逆利用することができ、A先生は当選してライバル候補は僅差で次点であった。


●自身の当確より興奮するライバル候補の落選


 選挙戦のクライマックスは、やはり投開票日の夜に「当選確実」が出た直後だ。しかし、本当の盛り上がりはその数時間後ということもある。


 ある選挙で、選対本部の応援者がA先生と喧嘩し、A先生がもっとも嫌うライバル陣営に入り込んだことがある。そこで、なんとA先生の悪口を吹き込んでいるようだ。その後、選挙カーですれ違ったり、ライバル陣営の選挙事務所の前を通ったりするたびに、「△△(A先生)落ちろ!」の大合唱が聞こえた。


 投開票日、A先生はすぐに当確が出てバンザイ三唱とあいなった。そして、1時間後にライバル議員の落選が知らされた。それを知ったA先生は、目を血走らせてバンザイを連発。その興奮度たるや、自身の当確が出たとき以上であった。そのときは選対本部が大盛り上がりし、一升瓶が次々と空になっていった。


 当選すると興奮度がマックスになる一方、落選すると“お通夜”となり、候補者は肩を落として支持者に詫びを入れ、支持者はトボトボと引き上げていく……。このように明と暗がくっきり分かれるのが選挙、特にドブ板選挙のおもしろさである。
(文=後藤豊/ノンフィクションライター)



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