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日産、偽装&隠蔽体質露呈…社長の「不遜」会見に国交省が怒り、検査不正でも「安全」強弁

  • 2017年 10月13日 06時45分
  • 提供元:Business Journal
日産自動車の西川廣人CEO

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日産自動車の西川廣人CEO

「日産を信頼していただいている皆様に、心からお詫び申し上げる」


 日産自動車の西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)は、国内のすべての工場で無資格者が完成車の検査を日常的に行っていた問題で陳謝した。しかし、国土交通省の立ち入り検査で、有資格者が検査していたように書類を偽装していたことが明らかになった。組織ぐるみで悪質な行為を繰り返していた可能性があり、経営責任を問われる事態に発展しそうだ。


 日産は10月6日、国土交通省に無資格者が完成検査を行っていた可能性のある過去3年分の既販車について、38車種、116万台のリコールを届け出た。無資格者の完成検査がいつから始まったかは現在のところ不明だが、車検を1度でも受けた車両については完成検査に準じた検査を受けたと見なして、とりあえず車検を1度も受けていない車両をリコールして、整備工場で点検する。


 自動車の型式指定制度では、型式指定を取得した車両を生産する場合、完成車1台1台を自動車メーカーが国に代行するかたちで環境や安全などに関する保安基準を満たしているか検査し、これをパスした車両がナンバーを取り付けて一般公道を走行できる。


 完成車を検査する検査員の資格については、自動車メーカーが研修方法などの社内規定を定め、これを国土交通省が承認する。完成検査は認定された従業員だけが行える。日産に資格を持つ完成車の検査員は国内に約300人いるが、これとは別に資格を持たず、完成検査を手伝う「補助検査員」が約20人いる。今回の問題は、資格を持たない補助検査員が完成検査を行っていたことが発覚したもので、こうした行為は道路運送車両法に抵触する。


 型式指定制度では、国は自動車メーカーを信用して自らが生産した車両の検査を任せている。日産は社内で完結するこの制度を悪用していたわけで、石井啓一国土交通大臣は「自動車型式指定制度の根幹を揺るがす行為で、極めて遺憾」とコメントしている。


 不正は国内6つの工場すべてで行われており、西川社長も「ある意味、常態化していた」と認めざるを得なかった。


●上層部に対する不満


 さらに問題発覚後の調査で、悪質性も浮き彫りになってきた。無資格者が完成検査し、預かっている有資格者の判子を使って検査結果を記録する書類に確認印を押していたことが国交省の立ち入り検査で明らかになった。無資格者の完成検査が法令に違反するとの認識があり、書類を偽装していた疑いが濃厚だ。国内6工場のうち、5工場で同じような行為が繰り返されており、組織ぐるみの不正であった可能性も否定できない。


 西川社長は「国交省から指摘を受けるまでまったく認識していなかった」と述べ、経営陣の関与を否定する。また、今回の問題に対する内部告発もなかったという。ただ、問題が発覚したのは国交省による日産車体の湘南工場への抜き打ち検査だ。業界では「国交省に対して日産車体の社員が告発した」との見方が強い。その背景にあるのが日産の上層部に対する不満だ。


 日産は2017年上半期(1~6月)のルノー、三菱自動車を含めたグループの世界販売台数がトヨタ自動車やフォルクスワーゲン(VW)を抜いて初めて世界1位となるなど、急成長している。日産の国内生産も好調で、今上半期は前年同期比23%増の53万3000台だった。一方で、収益を重視する日産は工場が繁忙でも人の増員を極力抑えることから、生産現場に大きな負荷がかかっている。西川社長は「人手が足りないのではなく、認識が足りなかった」と述べているが、無資格の補助検査員が完成検査を行っていた原因のひとつは人手不足と見られる。特に子会社である日産車体は日産から厳しいコストカットを迫られて生産現場は疲弊しており、日産に対する不満が国交省への不正告発につながったとしても不思議ではない。


 日産では、第三者も交えて1カ月程度かけて不正の詳細を調査する予定で、関係者の処分も「調査後に検討する」(西川社長)。今回のリコール費用として250億円程度を想定しているが、問題が拡大すればさらに追加の費用が発生する可能性もある。不正発覚後、日産の販売会社には顧客からの問い合わせが相次いでおり、一部では新車の購入をキャンセルするケースもあるなど、ブランドに傷をつけたのは間違いない。


●西川社長の対応に批判続出


 問題発覚後の西川社長の対応にも批判が集まっている。無資格者の完成検査を発表した9月29日、西川社長は欠席して役員でもない担当者のみの記者会見だった。週明けの10月2日になって開いた記者会見にやっと出てきた西川社長だが、冒頭から深く頭を下げることもなく、さらに「(無資格者であっても)検査は行われており、安全、安心は保証されている」と強調、無資格者の検査でも問題なくて国の制度のほうに問題があると言わんばかりで、この発言を報道で知った国土交通省の幹部は怒りの色を隠さない。


 日産は10月16日に予定していた新しい中期経営計画の発表を11月8日に延期するなど、業務にも影響が出ている。西川氏は日本自動車工業会(自工会)の会長を務めているが、その自工会が2年に1度開催している一大イベント「東京モーターショー」が10月に開催される。自工会では、不祥事を起こした西川氏が東京モーターショーの開会宣言することを憂慮、急きょ自工会の筆頭副会長である豊田章男トヨタ自動車社長が会長代行に就任することを決めた。東京モーターショーで西川氏は表舞台には立たないことになりそうだ。西川氏に対して、書類を偽造するなどの悪質性や国内すべての工場で不正を行っていたことなどから経営責任が厳しく問われるのは間違いない。今年4月にカルロス・ゴーン氏の跡を継いで日産のCEOに就任したばかりの西川氏だが、早くも窮地に立たされることになった。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)



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