Sony

ニュース

アマゾン、銀行設立か…利用者の利便性大幅向上、従来の銀行ビジネスを覆す

  • 2018年 02月09日 00時50分
  • 提供元:Business Journal
「Amazon HP」より

写真拡大

「Amazon HP」より

 世界全体で、ハイテク技術を用いた新しいプロダクトの“基盤”を開発しようとする企業が増えている。また、IT業界ではアマゾンやアリババドットコムのように、自社のIT空間を通して、企業や消費者がモノを購入したり、サービスを利用する機会を増やすことが強化されている。ビジネスや消費など、経済活動の“プラットフォーム=基盤”を開発し、シェアを獲得することが多くの企業にとって重要な課題となっている。


 12日に閉幕した世界最大の家電見本市である「CES」は、それを確認する機会となった。アマゾンなどと組んで、トヨタ自動車が新しい自動車のコンセプトを発表したことは、その一例である。トヨタは、衣食住の基盤としての自動車の開発を目指している。


 今や自動車は、IT空間とつながるコネクテッドカーをベースに、デジタル家電などの要素を取り入れて生活の幅広い分野で使われるデバイスと考えられている。このように、IT技術の高度化とその活用が、常識を覆すことが増えている。加えて、多くの企業がIT技術の活用を通した新しいビジネスのプラットフォームを単独ではなく、複数の企業と連携して開発しようとしている。


 金融業界でも、IT技術と金融ビジネスの融合である「フィンテック」を強化する企業が増えている。国内でも銀行業界を中心に“効率化”のためにIT技術が重視されている。そのひとつの例が、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が開発を進める「MUFGコイン」だ。各行独自の取り組みがどのようにして世界的なプラットフォームの開発競争に対応していくかは、国内金融業界の将来を左右する要因のひとつとなるだろう。


●銀行が独自の通貨を発行する時代の到来
 
 2017年の世界経済を振り返ると、さまざまな“想定外”の出来事が起きた。特に、ビットコインをはじめとする“仮想通貨”の価値がドルや円に対して急騰したことは、多くの経済学者や投資家の関心を引き付けた。


 ビットコインには致命的な問題がある。1ビットコインの価値がどれだけか、裏付けがないことだ。そのため、ビットコインの価値は需給に左右される。欲しい人の数が相対的に多ければ、ビットコインは買われ、価値は上昇する。その逆も然りである。


 価値を安定させる仕組みが備われば、円やドルではない仮想通貨に、支払の手段、価値の尺度、価値の保存という通貨の機能が備わることは可能だろう。それを実現しようとするのが、MUFGコインだ。MUFG以外にも多くの金融機関が独自の仮想通貨を開発し、実用化を目指している。


 MUFGの取り組みは国内では先行している。実用化が進み、各国の金融機関や一般企業との連携が進めば、内外の金融市場で同社の存在感は高まるだろう。そうした可能性を考えると、同社がMUFGコインの取引を行う取引所を開設し、価値の安定した仮想通貨取引を実現させようとしていることは重要だ。


 銀行独自の仮想通貨の発行計画を支えるのが、ビットコインの取引増加で一躍有名になった「ブロックチェーン」と呼ばれる分散型のネットワークシステムである。ブロックチェーンを使えば、1カ所に巨大なサーバーを設置し、コストをかけてデータや情報を管理する必要性が低下する。理論上、ひとつの端末で入力した取引などの記録が金融機関全体のデータと同期化する。休日なども送金を行うことができるようになるだろう。
 
 ATMでの預金引き出しにかかる手数料など、わが国の銀行サービスの満足度は高いとはいいづらい。人口が減少するなかでより多くの顧客を確保して収益を確保するためには、コストの低下と利便性の向上に向けた取り組みを同時に進める必要がある。MUFGコインはその目的達成のための取り組みのひとつだ。そのほかにも、手作業に依存する部分の多い有価証券の売買管理など、ブロックチェーンの拡張性が注目を集めている。


●金融サービスを取り込む、非金融業
 
 ブロックチェーンには無限の可能性があると考えるITの研究家がいる。それは、過言ではない。ルーティン業務をブロックチェーンによって運営し、省人化を実現しようとする取り組みは加速している。そのために、IT技術と金融理論、あるいは金融サービスを融合させるフィンテックのビジネスが重視され、コストの削減が目指されている。
 
 フィンテック事業の強化のためには、IT技術を専門とする企業などとの連携が欠かせない。国内の金融機関経営者のなかには、フィンテック企業をどれだけ取り込めるかが、今後の競争に生き残れるか否かを左右すると考える者も増えているようだ。こうした発想は、あくまでもビジネスの中心はこれまでの金融だという考えに基づいている。


 それ以上に重要なことは、世界全体で進むビジネスのプラットフォームの開発競争に、金融機関がどう関わっていくかだ。プラットフォーム開発のイメージを持つためには、アマゾンのビジネスを考えるとよい。アマゾンは世界のクラウドコンピューティング市場の30%超のシェアを手中に収めている。生鮮食品から耐久消費財まで、広範な“モノ”を扱うEC(電子商取引)プラットフォームも提供している。事実上、アマゾンがあれば生活できる環境が整いつつある。


 現時点でいえば、データ関連のサービスはアマゾンの収益の柱だ。しかし、同社の経営を見ていると、特定の事業で収益を稼ぐ発想は見当たらない。これは、上述の金融機関経営者の発想とは異なる。アマゾンだけでなく、アリババなどのハイテク企業も、金融サービスを成長実現のためのひとつのピースと考えているはずだ。


 もし、アマゾンが銀行ビジネスに参入すれば、同社の“プラットフォーム”は従来以上のペースで、企業や消費者を取り込む可能性がある。すでに、米国の通貨監督庁の関係者からは、商業を営む企業が銀行業に参入することによって、消費者の利便性が高まるとの認識を示している。“アマゾン銀行”が実現する可能性は高まっている。


●国内の金融機関が促進すべき、グループ外企業との協働
 
 重要なことは、IT技術の高度化とその実用化に支えられて人々の生活とネット空間の関係が深まるにつれて、社会が変化するということだ。今後、銀行を中心とする既存の金融業界からそれ以外の業界に、金融サービスの担い手がシフトしていく可能性がある。


 大規模かつ急速な社会の変化に、個々の企業が独自の取り組みで対応することは難しい。電気自動車の開発を見ても、多くの企業が他のメーカー、異業種の企業の参加を呼びかけ、オープンなかたちで新しい製品のコンセプトを具体化したり、技術を開発しようとしている。そうした取り組みの背景には、多くの企業、消費者からアクセスされるプラットフォームを整備し、自社のビジネス範囲を拡大させていこうとする考えがある。


 一方、国内金融機関の経営を見ていると、依然としてグループの経営はグループのリソースを軸に進めるべきという考えが強いようだ。一部の経営層には、他行との連携はタブーだとの頑なな考えを持つ者もいるようだ。EC企業など異業種との協働を進める銀行も出ているが、小粒な感は否めない。そうした発想は、かつての電機業界と似た部分がある。シャープ、三洋電機など、わが国の電機メーカーは国内で完成品を生産し、輸出する、慣れ親しんだビジネスモデルに固執し過ぎた。その教訓を、金融業界も生かすべきだ。


 これまでの発想を重視することが、新しい取り組みにつながるとは限らない。往々にして、従来の発想が柔軟な発想を阻害することのほうが多い。国内大手金融機関が協力して仮想通貨の開発と実用化を目指すことは、わが国の発想やフィンテックビジネスに関する規制などが、国際的な競争環境に適応できるか否かを見極めるためにも必要だ。


 ハイテク技術の普及はプラットフォームの開発競争などを通して、すべての業界・企業の将来を大きく左右するだろう。変化のスピードは、加速する可能性が高い。ライバル企業、異業種などとの連携を強化して、新しい金融のビジネスモデルを開拓することが、わが国の金融機関の生き残りには不可欠だ。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)



【関連記事】


関連ニュース

関連写真

湾岸タワマンと郊外の新興住宅地に、家は買っ...

家を買うときに資産価値を気にする人は少なくないと思いますが、そればかり重視すると、お金のために満足度を犠牲にすることになりかねず、それでは本末転倒です。もちろん住まいに求める優先順位は人それぞれですが、望ましい家選びとは、資産価値と満足度がバラ...

[記事全文]

注目の情報

ニュース写真

ニュース動画