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【かぼちゃの馬車事件】スルガ銀行、高額融資独占で金融庁が調査…審査資料を改ざんか

  • 2018年 04月17日 00時10分
  • 提供元:Business Journal
スルガ銀行(「wikipedia」より)

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スルガ銀行(「wikipedia」より)

 昨年の10月頃から問題が露呈し始め、年末頃には不動産投資に関わる不動産業者や銀行の間で「かなりまずい」と言われていたのが、今問題となっているスマートデイズ(旧スマートライフ)の女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」だ。


 4月9日、ついに同社は東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、監督命令を受けるに至った。帝国データバンクが公表したデータでは、負債は2018年3月末時点で債権者約911名に対し約60億3500万円、このうち約23億円が物件オーナー約675名に対するものとなっている。


 昨年秋、すでに不動産業者の間では、「物件数が多すぎる」「こんなに急に物件数を増やしても入居者がいないだろう」「実際に入居者はほとんど入っていないようだ」といった指摘や、「(シェアハウスを前提としていても、)物件価格が高すぎる」「基本的に融資はスルガ銀行だから買った人の手元にはほとんど残らないだろう」「将来は怖い」といった懸念が上がっていた。


 また、投資用不動産に融資をしている銀行関係者も「うちはあそこ(かぼちゃの馬車)には融資しない」と否定的な見方をしていた。


 そして今年に入り、債務に苦しむ投資家のみならず、融資したスルガ銀行も巻き込んで大きな問題となった。およそ700人にも及ぶ投資家がスマート社の賃料不払いで返済に窮し、同社を相手にした大型訴訟に発展しつつある。しかもスマート社は「サブリース」による「30年一括借上げ家賃保証」を謳っていたというから、どこかで聞いたことのあるような口説き文句で売りに売っていたということだ。そして一方的な賃料の不払い。これも不動産投資に絡む問題ではよく耳にする。


 サブリースの説明やその問題については、1月13日付当サイト記事『解約強要疑惑のレオパレス21、所有者が集団訴訟…1億超返還要求、一括借り上げの罠』を参照いただきたい。


●「頭金不要」と投資を誘った?


 一方、1件当たり約1億円ともいわれる高額な融資を続けてきたスルガ銀行も非難の的になり、金融庁もその調査に乗り出している。スルガ銀行が融資した経緯については、融資に必要な審査書類に「改ざんデータ」が使われたといわれている。一部の報道では、購入者の通帳を改ざんし、無いはずのお金が通帳にあるように書き換えられていたと詳報している。


 しかも、投資家に対して「頭金不要」との説明があったとの情報も出ている。ただ、スマート社は、表立って「頭金不要」とは広告などで謳わないはずだ。というのも、不動産投資に利用できる融資では、よほどの資産家や得意先でない限り、一定の頭金を入れることが原則だからだ。不動産投資は余裕資金で取り組むもので、金融資産に余力がないと金融機関としても安心して融資することができない。


 問題となっているスルガ銀行にしても同じで、頭金なしで投資家に融資することもなければ、余裕資金の無い人に融資することはない。それをわかっているスマート社が、広告やホームページなどに、あえて「頭金なし」を公言することはない。


 従って、「頭金なし」と言っていたのは、スマート社の物件売却を仲介した仲介業者の担当者か、スマート社の社員がそう誘導したかのいずれかであろう。いずれにしても、証拠の残らない口頭説明であれば、真実はわからない。ただ、実際に投資家が頭金なしで購入できたとすれば、原則としてそれを金融機関が認めていない以上、その背景には融資に必要な通帳の写しなどの資料の改ざんがあったと考えざるを得ない。


 そして、仮に融資の審査資料に改ざんがあったとしたら、報じられている通帳の改ざんだけでは済まないはずだ。不動産の売買取引の経験があればわかるが、売買契約書や重要事項説明書、契約時の手付金の領収書など、売買にあたって金額が記載される書類とも辻褄が合っていないと、やはり融資の審査が通らないからだ。


 これらの書類まで改ざんしているということになれば、その仲介を行った不動産業者は宅地建物取引業法にも違反していることになる。事実、これまではスマート社と多額の融資をしたスルガ銀行ばかり名前が目立っているが、仲介していた不動産業者の名前も一部では報道され始めている。


 また、スルガ銀行でも多額の融資をした支店に偏りがあるといわれている。不動産投資の業界では有名な話だが、銀行の担当者によって融資の出やすさに差があるのはスルガ銀行に限ったことではなく、不動産会社はその担当者を追って融資先を変えることも多い。


 今回の改ざん問題でも融資した支店に偏りがあるとすれば、特定の担当者が積極的にスマート社の融資を扱っていた可能性は高い。そうなると、何件もの融資を担当するなかで、改ざんに気が付かなかったというのは考えにくいが、これもどこまで真相が究明されるかはわからない。


 当事者の中心であるスマート社が民事再生法の適用申請に至り、投資家による大規模な訴訟問題に発展しつつあるなかで、さらに問題は大きくなりそうだが、この問題の本質は何か、そこから学ぶべきものは何かという点を考えてみたい。


●サブリースという契約に問題があるのか


 この問題が大きく取り上げられるようになったのは今年1月頃、スマート社から家主への賃料支払いが一方的に停止されたことが発端だ。約束された賃料が入らなければ、家主は購入時に借りた融資の返済に窮してしまう。しかも、スマート社が「サブリース」契約というかたちで家主から借り上げているので、家主が自分の物件でありながら入居実態がわからないということも家主の不安を煽ることになる。


 一般的な建物賃貸借契約であれば、家主は入居状況、すなわち何部屋入居しているか、誰がいくらで借りているかといったことを当然、把握できるが、サブリース契約では入居者はあくまで転貸人(この場合はスマート社)との契約に基づくため、家主が入居状況を知ることがない。これはサブリース物件では一般的だが、今回のような問題が起こったときには、自分の物件にもかかわらず実態がわからず非常に困ったことになる。


 さらに、かぼちゃの馬車では、実態として入居率が悪かったといわれており、スマート社は入居者からの賃料収入に対して家主への支払賃料が逆ザヤになっていた可能性が高い。実際に、物件の売却益を家主への賃料支払いに回していた自転車操業状態であったとみられている。そして、賃料の不払いへとつながる。


 以上のように、ここでも最大の問題は、サブリース契約だ。以前にも同じことを書いたが、不動産投資では入居者の入らない物件を購入することが最大の問題で、購入した不動産、あるいはその購入時の融資が、あっという間に不良債権となってしまう。そして、サブリース契約は家主にとっては安定した収入が期待できるメリットがある一方、部分的に家主としての権利や責任を放棄してしまうことになるため、問題が発生した際には対処が難しくなる。今回のケースも、まさにそういった状況になっている。


 家主となる人は、人生に大きな影響を与える資産や負債を持ち、長期に運用していく家主としての覚悟、責任を自覚する必要がある。そういう意味では、サブリースに頼るような買い方をしてはいけない。裏を返せば、サブリース契約なしでも満室稼働が期待できる物件かどうかを自分で判断することが重要になる。


●甘い資金計画はやはり命取り


 次に、この問題であらためて考えなければならないのは、資金計画の問題だ。特に、頭金(自己資金)と融資のバランスは間違えてはならない。前述のように「頭金なし」と言って販売していた疑いがあるが、これは確かに魅力的な言葉ではある。実際にどのようにして勧誘したか定かではないが、「手元資金を出さずに、毎月○万円の収入が得られる」といった内容だったようだ。「無料で毎月お金が入って来る」と言っているのに等しい。投資家が、“うまい話”に乗ってしまった格好だ。


 必ずしも「頭金なし」が悪いとは言わない。実際に住宅ローンなどは物件価格の100%まで多くの金融機関が審査に基づき融資しており、家計に問題のない範囲の融資を借りるのであれば、問題はない。


 ただ、不動産投資に限っては、原則として頭金が不要な融資はないと前述した。そもそも、投資は余裕資金で行うもので、不動産投資においては、一定額の頭金が入れられない、あるいは最悪入居者が入らなかった場合でも相当期間自分の資金で補えるぐらいの余裕がない場合は参加(投資)するべきではない。


 今回のスマート社の問題に関しては、「30年間のサブリース」や「頭金なし」といったうまい話ばかりを挙げて勧誘し、融資に審査書類を偽造してまで売ったとすれば、法律に照らして裁かれるべきだろう。ただ、不動産投資をする側も、自己責任の範疇を超えるものに手を出したのではないかとの疑念も残る。これから不動産投資をしようと考えている方は、数千万円、数億円という借金をすることについて、責任とその怖さを学ぶ必要がある。


●投資物件としての商品価値がどこまであるか


 また、仮に今回問題となったシェアハウスが、当面うまく稼働していたとしても、長期的な視野で考えた場合、やはりどこかでおかしくなっていた可能性は高い。


 これも業界では有名な話だが、スルガ銀行は他行が融資しない客や物件についても比較的緩い審査で融資を出してきた。その代わりに融資する側のリスクが高くなるため、そのリスクを高金利で担保する融資スタイルだ。スルガ銀行の金利は、年利4.5%でスタートするといわれている。今回のスマート社の物件についても、大半はこのような金利だった可能性が高い。仮に、もう少し低い金利設定だったしても、他行と比べて高い金利であったのは間違いないだろう。


 今の不動産相場では、融資金利が3%台後半以上では、相当の自己資金を出さないと返済さえおぼつかなくなってしまう状況だ。逆に、物件価格に対して相当の頭金を入れることができる投資家であれば、金利の高いスルガ銀行から借りる必要はない。


 そうなると、スルガ銀行を利用するケースは必然的に、資金が少ない人が、利回りの高めの物件を購入することになる。その意味では、スマート社の物件はシェアハウスという仕組みなので、一般的な賃貸物件よりも高単価で貸すことができ、見た目の利回りが高い。しかもサブリース付きとなれば、スルガ銀行の得意な組み合わせとしてマッチした物件だった。


 さらに、他行が融資を敬遠することが多かったこともあり、ほとんどがスルガ銀行でしか融資が受けられず、高い金利でスタートする不動産投資だったことが投資家をより苦しめることになっている。


 まだこうした問題が表面化していなかった頃、スマート社の営業担当者から話を聞いたことがある。記憶によると、表面利回り8%程度だった。しかも、設定された想定賃料(新築で募集前のため、あくまで想定の賃料で利回りを計算する)は、パッと見ただけで「高い」「無理」との印象を受けるほどだった。すなわち、賃料がシェアハウスとはいえ、その相場よりも高い。また、シェアハウスとしての完成度と部屋の広さ、賃料設定のバランスが悪く、入居者確保が難しいため、長期運営が無理だろうという印象だったのだ。


 仮に、1億円の物件を、頭金なし、不動産投資の一般的な最長融資期間30年、金利4.5%の融資で購入する場合、毎月およそ50万円の返済になる。一方、収入は表面利回り8%の物件なら、毎月の賃料約67万円になる。毎月の返済額だけを差し引いても残り17万円しかなく、実際には共用部の電気代や固定資産税等の税金など維持費を差し引けば、良くても手元には10万円程度しかなくなってしまう。


 スタートからこの状態では、少しでもスマート社が賃料の値下げを主張したり、サブリース契約を破棄するといった事態になれば、家主は厳しい状況下に置かれることは明らかだ。実際に、スマート社からの賃料は滞り、同社が民事再生を適用されるまでになった。事態としては、筆者の想定より少し早かったというだけかもしれない。


 いずれにしても、スマート社の物件はスルガ銀行の融資頼みとなっていたこともあり、投資の対象としては厳しいものだったといわざるを得ない。


 サブリース契約が悪いわけではないが、それを前提にした不動産投資はどうしても物件本来の訴求力(賃貸物件としての魅力)に対しての評価がおろそかになる傾向が強い。これから不動産投資を考える投資家は、この問題(すでに事件かもしれないが)から、金銭面だけでなく、不動産という実物についてももっとよく調べてから投資することを学ぶべきだろう。


 不動産投資も投資であり、メリットばかりではない。それにもかかわらず、デメリットを正直に伝えないような業者から購入することは控えるべきで、疑問や不安を感じたら投資しないという選択肢があることを最後まで忘れないようにしたい。
(文=小林紘士/不動産ジャーナリスト)



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