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嫌われる上司が会社を支える…くだらない意見は無視、徹底的にダメ出し

  • 2018年 06月11日 16時00分
  • 提供元:Business Journal
「gettyimages」より

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 毎年、各社から発表される「理想の上司」のアンケート調査やランキング。近年、このなかに選ばれる顔ぶれがカリスマ型から親しみやすい兄貴型に変化している。今年3月に明治安田生命保険が発表した新入社員対象の同調査でも、「理想の男性上司」の1位は2年連続でウッチャンナンチャンの内村光良だった。


 理由として多かった回答は「親しみやすい」「頼もしい」というもの。多くの新入社員が優しくて頼りがいのある上司を求めていることがわかる。


 しかし、親しみやすい上司は本当にいい上司なのだろうか。「陰で会社の業績を支えているのは、周囲から嫌われているような上司です」と話すのは、『悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント』(星海社)の著者で人材研究所社長の曽和利光氏だ。


●部下がミスしたら徹底的にダメ出し


「周囲から嫌われているような上司が会社を支えている」とは、いったいどういうことか。曽和氏は、周囲から嫌われている上司を、あえて「悪人」と呼ぶ。


 どの企業にも、自分が正しいと思うことをストレートに主張するタイプの上司が少なからずいるものだ。そうした上司は、人に嫌われたり非難されたりすることを恐れず、逆風を真正面から受け止める。そして、往々にして愛想が悪く自分を飾ろうとはしない。そのため、周囲からは好かれず、ときに「悪人」と評されることもある。


 しかし、曽和氏は「企業には、自らの評価や不利益をかえりみず、ほかの人たちや組織に利益をもたらす“利他的行動”を取れる人材が不可欠」と語る。


 たとえば、企業やチームに改革が必要なとき、個々の立場を慮りバランスを取ることばかりを考える調整型のリーダーに、大胆な改革ができるだろうか。嫌われることこそないかもしれないが、成果を上げるのは難しいに違いない。


 部下への接し方についても同様だ。一般的に、部下から慕われる上司は部下が仕事でミスをしても怒鳴らず、逆にポジティブな言葉を投げかけて部下の成長を促すというイメージだ。


 もちろん、それは悪いことではない。しかし、嫌われることを恐れない悪人のマネジメント術は「徹底的にダメ出しを行う」という真逆のものだ。


「部下に自分自身のことを理解してもらうために必要なのは、ポジティブな言葉ではなく、ネガティブなフィードバックです。ぐうの音も出ないほど部下を落ち込ませることにより、結果的に彼らが成長していくのです」(曽和氏)


 どんな仕事でも、チームで動いて成果を上げるというケースがほとんどだろう。そのときに重要なのは、上司が一人ひとりの部下の向き不向きを把握し、彼らに自分の役割を的確に理解してもらうことだ。


「それができないチームは、最大限のパフォーマンスを発揮することはできません。だからこそ、好かれる上司よりも嫌われる上司が重要になるのです」(同)


●人間関係の相談は完全スルー?


 人間関係のマネジメントにおいても、悪人の上司は好かれる上司とはまったく異なるアプローチを取る。


 変化の激しい現代では、素早い「判断力」が求められる。では、部下からチーム内の人間関係について相談を受けた際に、上司はどう判断すべきだろうか。


 この場合、部下は問題に対してすぐにアクションを起こしてくれる上司のほうが「頼もしい」と感じるに違いない。しかし、悪人の上司は部下から人間関係の相談をされても「真剣に取り合わない」のだという。


「多くの人が集まる組織では、ある人をこき下ろす人がいれば、その人を絶賛する人もいます。どちらかが間違っているというより、組織にはそういう多面的な部分があるということです。そのとき、限定的で少ない情報から行動を起こすと、悪い結果を招くことになりかねません」(同)


 優しくて頼りにされる上司は、当事者を呼び出して話を聞き、無理やり仲直りさせたり飲みに連れて行ったりしがちだ。しかし、それで一件落着かといえば、必ずしもそうではない。問題の本質が明らかになっていればいいが、そうでなければ、かえって人間関係を悪化させることにもなりかねないからだ。


 部下の相談を真剣に取り合わずにスルーすれば、「冷たい上司」「頼りにならない上司」という印象を与えることになるだろう。しかし、「組織をより正しい方向に導く」という観点で見ると、スルーするほうが結果的に誠実な対応になることもあるという。


●「離職率を下げるために不満を解消」は危険?


 そもそも、部下に好かれる上司は「“風通しのいい職場”がいい組織」だと勘違いしていることが多く、それゆえ不勉強な若手でも自由に発言できる環境を目指そうとする。しかし、曽和氏によると、悪人の上司は「くだらない意見は退ける」という。


「誰の発言にも耳を傾けるということは、本来なら無視してもいい『どうでもいい意見』に対しても丁寧に対応するということです。それは、コミュニケーションに対するコストがより一層増すことを意味します。


 さらに、『どうでもいい意見』にも優しく対応すると、『徹底的に考え抜く姿勢』や『真剣に議論をする気質』を阻害することにもつながる。そんな弊害を招くのであれば、いっそ『どうでもいい意見』は無視したほうがいいのです」(同)


「それはブラック企業では?」と感じる人もいるかもしれない。確かに、このような上司のいる会社は離職率も高そうだ。しかし、曽和氏は何も“ブラック企業化”を勧めているわけではない。


「人が入れ替わらないと、『組織のマンネリ化』という弊害が生まれます。変わらないメンバーで同じ仕事を続けていると、なあなあの空気が醸成され、新しいアイデアが生まれなくなる。それで、時代の変化に対応できるでしょうか?」(同)


 見方を変えれば、雇用のミスマッチによって離職者が出るのは、ある意味で自然なことでもある。


「むしろ、離職率を下げるために社内の不満を解消しようとするほうが危険だと思います。会社、そしてチームは、同じ目標や価値観を共有してこそ本領を発揮することができる。離職率を下げるために社員すべての不満を取り除こうとすると、中途半端になって企業パワーが落ちることになります」(同)


 だからこそ、「周囲から嫌われている上司=悪人が必要」と曽和氏は主張する。


 悪人タイプの上司は、一般的な「理想の上司」にはほど遠い。しかし、そうした上司は人間的に悪人なのではなく、「自分のためではなく、組織のために自ら悪役を引き受けてくれる利他的な悪人」(同)なのだ。


 もしかしたら、あなたが嫌っている上司も、本当は会社のために悪役を引き受けてくれているだけなのかもしれない。
(文=鉾木雄哉/清談社)



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