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岡田監督への不満、壊れかける代表/犬飼元会長2

  • 2018年 06月14日 12時16分
  • 提供元:日刊スポーツ
闘莉王(中央)は犬飼基昭会長(右)と笑顔で話す。左は岡田武史監督(2010年6月13日撮影)

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闘莉王(中央)は犬飼基昭会長(右)と笑顔で話す。左は岡田武史監督(2010年6月13日撮影)

<言葉の中に見えたもの ~W杯南アフリカ大会を戦って~(2)>

 2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会直前の岡田ジャパンは強化マッチでは敗戦が続き、チーム内からは不満の声が漏れ始めていた。

 苦しむ岡田監督、戸惑う選手。見守っていた犬飼基昭元日本サッカー協会会長(75)は、南アフリカ・ジョージで選手に声をかける。犬飼元会長の南アフリカ大会での経験を元にした「言葉の中に見えたもの ~W杯南アフリカ大会を戦って~」の第2回を通して、揺れる選手の心理と、大一番を前に急激に変貌を遂げていくチームの内情が浮かび上がってくる。

  ◆  ◆  ◆

 2010年6月、代表チームは事前合宿地のスイス・ザースフェーに入り、直前の強化マッチはイングランド代表、コートジボワール代表と行いました。いずれも敗れ、韓国との壮行試合から続く不振から脱出できない状況でした。厳しい状況のまま、チームは南アフリカのキャンプ地ジョージに到着します。

 その間、キャプテンは中沢から長谷部に替わりました。中沢はチームの不振に責任を感じていました。非常に優しい性格で、責任感も強い男です。そして彼は中村俊輔と親しかったのですが、代表メンバーのレギュラー争いで俊輔が定位置を失い、そうしたことも中沢には影響を与えていたと私の目には映りました。

 そんな状況を岡田監督は把握していました。だから、中沢を重圧からリリースしてやるために、交代させたと私はそう理解しています。中沢の後任には中盤でしっかりしたプレーをしていて、きちんと物が言える選手が適任だろうということで、長谷部になったということです。

 キャプテンを替え、レギュラー陣を固めながら、チームはやれるだけの手を打っていました。それでも、強化マッチで勝てないことで、どうしても意見のぶつかり合いは出てきます。ただ、それは個性の強い選手の集まりですから、私はそういうものだと受けとめていました。競争を勝ち抜いてW杯メンバーを手に入れた選手です。それぞれに主張もあります。個性の塊でした。

 先述したように岡田監督は選手を理解しようとしていましたが、それが伝わる選手もいれば、伝わらない選手もいました。岡田監督は表現が下手でした。監督に理解されていると思えた選手はいいのですが、そうでない選手もいます。伝わらなければそのままです。当人同士が理解していればそれでいい。それが岡田監督の考えでした。外に向けてそうしたやりとりは一切出ませんでした。ですから、理解されていないと感じた選手にとっては、わだかまりは残っていたのでしょう。

 キャンプ地ジョージに入ったころから、私は選手に声をかけなければと感じていました。岡田監督に対し、声の大きな選手の不満が聞こえてきたからです。それはよくない状況でした。どうしたらいいかと考えていたある日の朝、自由散歩をしていた長谷部と川口にちょうど出くわしました。私は2人に言いました。「日本サッカーのために選手同士よく話し合えよ」。朝の落ち着いた雰囲気の中、私の話を聞いていた時の2人の反応がすごくよかったことを覚えています。

 恐らく選手自身もミーティングをしたがっていたんだと思います。チーム内で監督に対して不満が出ていたことを、問題だと認識していたんでしょう。でも、選手ミーティングのきっかけがつかめないでいた。選手の発案でやれば、何か言われるかもしれない。会長が指示すれば彼らも動きやすくなる。

 2人とも私の意図をよく理解して、チームをまとめるために奔走したと聞いています。2度ミーティングをしたと、長谷部と川口が伝えに来てくれました。その内容については私は聞きませんでしたし、彼らも言う気もなかったでしょう。私はそれ以上は立ち入りませんでした。選手たちがよく話し合えば、おのずとチームの想いは重なって行くだろうと信じていたからです。

 あのチームはそういう絆をはぐくめる素地がありました。こんなエピソードを思い出していました。アジア最終予選でのバーレーン戦で、闘莉王がオウンゴールをした時でした。1点差に迫られ、日本代表は衝撃のあまり言葉を失っている時、中村俊輔が「トゥー、ナイスシュート」と声をかけたのです。闘莉王は試合後にこう言っていました。「頭が真っ白になりました。どうしていいかわからなくなりました。でも、俊輔さんの言葉で我に返ることができました」。

 俊輔はとっさの判断で、何が闘莉王を冷静にさせる言葉かを選択していたんでしょう。そういう言葉をかけられることこそ、その選手の深みを感じさせます。このピッチ内でのやりとりは、チームメートも見ていたと思います。1人の選手の感性で、追い詰められた選手が救われ、浮足だったチームが息を吹き返すこともあります。そういうポテンシャルを持っているのが代表チームという集団だと私は思います。それは、今の代表チームもなんら変わらないと信じます。

【元日本サッカー協会会長・犬飼基昭】

(つづく)

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