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国の義務教育とは異なるオルタナティブスクールが、優秀な人材を量産している理由

  • 2018年 06月11日 16時50分
  • 提供元:Business Journal
オルタナティブスクールの子どもたち

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オルタナティブスクールの子どもたち

●不登校の中学生が33人に1人、既存の学校だけが学ぶ場ではない 


 平成28年度の問題行動・不登校調査で、小中学生の不登校(年間の欠席日数30日以上)児童生徒数は、小学生が3万488人、中学生は10万3325人と過去最多を記録。小学生で213人に1人、中学生にいたっては33人に1人が不登校となっています。


 不登校になったきっかけとして、「いじめ」や人間関係のトラブルより、「不安」と「無気力」が圧倒的に突出しています。「不安」や「無気力」のなかには、いろいろな状況があるでしょうが、少なくとも不登校になる子どもたちにとって、学校が魅力を感じられない場所になっているということでしょう。


 こうした事態に対応するために「教育機会確保法」が施行され、徐々にではありますが、多様な学びの選択が認められるようになってきてはいます。つまり、何がなんでも元の学校に戻すことを目指すのではなく、多様な学びの機会を認めようという動きです。


 これまでも、日本の管理型教育に疑問を持ち、積極的に既存の学校を選択しない人もいましたが、あくまで少数派でした。しかし最近は、一般に、いわゆる国が定めた学校だけが学びの場ではないという考え方も、広がりつつあるのではないでしょうか。


 そういう人が選ぶのが、オルタナティブスクールです。オルタナティブスクールとは、日本では幼児教育から中等教育の期間において、従来の義務教育や学校制度とは異なる新しい運営制度、進級制度、教育科目を持つ教育体制という意味です。不登校の子どもが通うフリースクールやインターナショナルスクールも含んでいわれることがあります。


 これに対して、学校教育法の第一条に定められる学校を一条校といいますが、それに該当しない学校といってもいいでしょう(一部には、オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した「芸術としての教育」を実践しているシュタイナー学園のように、独自の教育を行いながら一条校になっているところもあります)。


●これからの教育の潮流は管理型から探究型へ 


 2020年の教育改革について解説したように、既存の管理型の学校教育を見直そうという動きが高まるなか、それに先んじて探究型の学びを実践している学校が多いのも、オルタナティブスクールの特長です。


 では、探究型の学びとは、いったいどのようなものなのでしょうか。そのアプローチは、“探究”というぐらいですからさまざまですが、一方的に先生が正解を教えるのではなく、生徒自身が考え課題を解決することを促す学習といったらわかりやすいでしょうか。プロジェクト学習ともいわれます。既存の学校のなかでも総合的な学習の時間がそれに近いのですが、一部ではなく、教育のベースをそこに置いている学校を探究型の学校とここでは呼びます。


 神戸で20年以上の実績がある「ラーンネット・グローバルスクール」もそのひとつ。今回は、その学校で行われている教育をレポートしながら、探究型の学びの実践と効果を考えてみます。


 設立したのは、神戸情報大学院大学学長を務める炭谷俊樹氏。世界的コンサルティング企業のマッキンゼー・アンド・カンパニー勤務時代、デンマークに在住していた時に長女が受けた、一人ひとりに光を当てて個性や自立心を伸ばす教育に感銘したことがきっかけとなり、帰国後、このスクールをつくりました。カリキュラムは次の4つ。


1 .基礎学力をしっかり身につけるベーシック学習
2 .子どもにとって興味深いテーマを科目横断型に学ぶテーマ学習
3 .自分が興味をもったことを自ら探究するプロジェクト学習
4 .子どもたちがすきなことにとことん取り組むとことんやろう!


 ベーシック学習で育んだ基礎学力を基に、子どもがやりたいという気持ちを大切にして主体的に学ぶ力を育てています。子どもの学習を支援するのは豊富な社会経験を積んだ社会人。先生ではなく、ナビゲータと呼ばれる人たちです。そのスタンスは教えるのではなく、子どもを信頼し、対話によって子どもと共に学び成長します。


 しかし、見学に行くと既存の学校のイメージとはだいぶ違っていて、子どもたちは一見遊んでいるように見えるので、いわゆる学力がつくのかと心配にもなります。そこでその成果を知るために、実際にラーンネットで学んだ人たちに話を聞きました。


 取材時に中学1年生になったばかりのM君は、ラーンネットを振り返って「好きなことを見つける6年間だった」と言いました。彼は小学1年の時、アメの販売機をつくったのですが、最初は段ボールの中に人が入って人がアメを表出させるものでした。それを手動式の販売機にしたいと、失敗しながら何度もトライ。小学3年の時についにレバーを回して商品が出る仕組みを完成させました。今では電子部品の知識もついて、さまざまな作品を作れるようになったそうです。


 その間、ナビゲータは限界をつくらず、どうしたらできるかを一緒に考え、失敗しながらトライすることをサポートしてくれたとか。中学受験を経て私立中学に進学した彼は、理系クラスで上位の成績をとっていました。


 また、すでに大人になった卒業生にも話を聞きました。取材時に東京大学大学院から有名なIT企業に就職したばかりのS君。ラーンネットで6年間過ごした後、中学受験で私立中高一貫校に進学。高校2年終了時に飛び級で会津大学に入学し、競技プログラミング部部長として、世界レベルの大会に出場するなど、コンピュータプログラミングの分野で活躍し、東大大学院在学中にプログラミングの国際大会にも出場。将来は得意なアルゴリズムを活かして、技術者を指導する技術者になりたいと話してくれました。


 2人に共通しているのは、自分の中から湧き出る好奇心が学びの原点だということ。また、それを認めて支援する大人の存在があったからこそ、とことんがんばり抜く力がついたのではと感じました。


●探究型学習は、高度知識の取得にも有効 


 炭谷氏は、「探究型学習と高度な知識習得は実は連動する」と言います。探究型で学習を深められる子どもは、結果として偏差値が高い大学にも入れるくらいの学力を習得することが多い。突き詰める経験があるから、知識を吸収するのも得意で、ペーパーテストや受験にも対応ができてしまうのだとか。


 すでに新しい時代が始まっています。先生や親の言うことに疑問を持たずに黙って従ういわゆる良い子、ひたすら受験勉強だけをしていろいろな遊びを経験してこなかった子、失敗から学ぶ経験をしてこなかった子は、変化に対応することができず、使えない人というレッテルを貼られてしまうかもしれません。


 今求められるのは、主体性と変化に対応する力を持っている人。人とは違う発想や個性をもっている人。つまり出る杭です。その上で、互いに違いを認め合いながら、協働して新たな世界をつくっていくことが必要なのです。


 出る杭を伸ばすとは、子どもの中にある“自分で伸びようとする芽”を潰さずに大切に育てること。その手法のひとつが、探究型の学びなのでしょう。


 これまで、市民権を得て来なかった面があった探究型の学校ですが、ここにきて注目されるようになり、ラーンネット・グローバルスクールにも問い合わせが殺到しているとか。時代の変化を読み取り、子どもの持っている力を引き伸ばすことに真剣に向き合っている学校は、これから伸びていくことでしょう。


 教育現場も変化を求められているのです。
(文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト)


【参照】
平成28 年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(確定値)について



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