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リポビタンやリアップの大正製薬、オプジーボ開発会社の事業を買収へ

  • 2019年 01月12日 07時00分
  • 提供元:Business Journal
リポビタンD(「Amazon HP」より)

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リポビタンD(「Amazon HP」より)

 最近、わが国の大手製薬メーカーが、生き残りをかけて積極的にM&Aに打って出るケースが目立つ。国内で少子・高齢化、人口の減少が同時に進むなか、製薬メーカーが生き残っていくためにはどうしても企業体力を拡充する必要がある。特に、新薬開発力を維持するには、相応の企業規模が欠かせない条件になるからだ。


 武田薬品工業に加え、大正製薬ホールディングスも海外での買収に関して合意に近づいている。わが国の製薬メーカーが自助努力で海外市場に進出し、その国にあった製品やサービスを提供するには時間がかかる。その間にも競争は進む。また、ゼロから自前で海外進出を行うリスクは高い。それに比べ、実績のある企業、あるいは事業を取得したほうが効率的と考えられる部分が多い。製薬業界を中心に、海外事業を強化して持続的な成長を目指そうとする企業は増えていくだろう。


●生き残りをかけ買収を行う大正製薬
 
 生き残りのために、国内第11位の製薬企業である大正製薬が、米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が運営するフランス市販薬事業の買収を目指している。この買収は、企業全体を買収するのではなく、買収を行う企業の成長に資すると考えられる事業を取得する、カーブアウト型の買収だ。カーブアウト型買収の場合、企業が重点分野に位置づける事業とマッチする資産を取得することで、的を絞って成長戦略を強化することができると期待される。


 大正製薬は、国内市販薬事業を主力にしてきた。主な商品には、リポビタン、パブロン、リアップがある。こうした商品は、テレビコマーシャルで多くの人におなじみだ。それだけ、ブランドの認知力が高いということである。それは、同社の成長に欠かせない。


 ただ、長期的に見て国内で収益を獲得するビジネスモデルの持続性が高いとはいえない。なぜなら、わが国の経済が縮小均衡に向かっていると考えられるからだ。人口の減少などに伴い、需要は低下していくだろう。


 そのなか、企業が国内事業から収益を獲得し持続的な成長を目指すことは難しい。市販薬をコア・コンピタンスとしてきた大正製薬が、新薬開発を主力とするバイオ医薬品企業を目指すことも現実的ではない。そのため、海外でより高い収益が見込める事業を買収するなどする必要がある。まさにそれは、企業の生き残りを目指した取り組みといえる。


 海外での買収戦略は、同社の経営に大きな影響を与える。海外での事業展開には、わが国の発想が通用しないことも多い。変化に対応するためには、経営者のマインドセットを大きく変える必要が出てくるかもしれない。状況によっては、経営の専門家を招き、戦略の執行を任せる必要もある。そうした変化に前向きに取り組むことが大切だ。


●製薬企業における買収の重要性
 
 製薬業界といっても、市販薬と医療用医薬品ではビジネスモデルが異なる。医療用医薬品企業は、“ブロックバスター”(年間の売上高が10億ドル<1130億円>を上回る医薬品)を多く揃えなければならない。それができない場合、その企業の存続が危ぶまれる。他企業の新薬開発だけでなく、ジェネリック医薬品(特許が切れた後発医薬品)の存在も競争上の脅威だ。医療用医薬品企業が生き残るためには、新しい効果が見込める、画期的な治療薬を生み出さなければならない。


 ただ、製薬企業が研究開発に着手してから新薬を発売するまでには、9~17年程度の時間がかかる。世界第14位の医療用医薬品企業であるBMSが小野薬品などと開発したがん治療薬「オプジーボ」は、22年の歳月を要した。想定された効果が確認できず、開発が中止されることもある。その状況が続くと、収益には下押し圧力がかかる。


 新薬を開発するためには、他の医療用医薬品企業(またはその一部事業)を買収する必要がある。買収や研究開発向け資金を確保するために、自社の非中核事業を売却する必要性も高まっている。武田薬品は海外競争力を高めるためにアイルランドのシャイアー社を買収する。それに対して、BMSは中核事業の強化のためにフランスの市販薬事業を売却しようとしている。


 BMSのように事業の一部を売却するケースは増えるだろう。出物があった際にそのリスクを精査し、買収が適切か否かを見極める力をつけることは、大正製薬をはじめ、わが国企業の収益力強化に欠かせない。企業全体を買収することに比べると、カーブアウト型の買収のほうが資金面を中心としたリスクは抑制できる。そう考えると、海外での買収に伴うリスクを見極めるだけでなく、出物があった際に迅速にそれを評価し、買収実行の可否を判断する組織力を整備することは、わが国企業の将来を左右するだろう。


●重要性高まる経営者の役割
 
 今後、わが国製薬企業などの生き残りのために、経営者の重要性は増す。特に、海外の買収などに関するリスクを的確に評価し、収益につなげる経営者の手腕が求められる。


 海外展開を重視するか否かは、成長をどう考えるかの問題にほかならない。成長のためには、新しい商品などを開発し、それをより多くの顧客に販売できれば良い。この考えに基づくと、相対的に成長期待の高い海外事業を強化することは避けて通れないはずだ。大正製薬はその考えを重視し、実行に移そうとしている。


 武田薬品の巨額買収決定もあり、国内製薬業界で海外事業を強化する関心は高まっている。海外進出に出遅れた製薬企業を他社が買収するなどし、わが国製薬業界の再編が進む可能性もある。


 このように考えると、「海外企業などの買収はリスクが高い」といって、はなから否定的に論じることは適切ではない。わが国では、買収の結果、財務内容が悪化し企業経営の安定性・持続性が損なわれるという不安は根強い。海外の製薬大手が買収を重ねて巨大化したにもかかわらず、企業価値が高まっていないとの指摘もある。


 そうした懸念を解消するためには、海外市場に精通した、あるいは買収に関する専門的なスキルを持つ人物を経営陣に招き、実務を任せる必要がある。重要なことは、経済のグローバル化を止めることはできないということだ。変化のスピードが加速化する環境に適応するためには、グローバルな視点で経営を考え、成長につながる取り組みを実行できる経営者が求められる。そのうえで、経営者は有言実行の経営=業績計画を実現することを進めなければならない。


 大正製薬をはじめ買収によって成長を目指す企業のトップが、そうした発想を実務に反映させれば、企業の成長期待も高まるだろう。そうした企業が製薬業界だけでなく、他の業界にも増えれば、わが国の経済の実力=潜在成長率にもポジティブな影響があるだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)



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