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働き方改“悪”の危険性…厚労省、医師等の一部職種に「月160時間」残業を容認か

  • 2019年 02月12日 08時00分
  • 提供元:Business Journal
「Gettyimages」より

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「Gettyimages」より

 紆余曲折の末、本年4月から、働く人の残業時間(時間外労働時間)に上限が設けられます。いよいよ安倍政権による働き方改革が始まります。


 働き方改革により、働く人の時間外労働時間は原則月45時間、年360時間となります。特別な場合でも単月100時間未満、年720時間とすることが法律で定められました(中小企業においては、いきなりの実施は困難が予想されるとのことで、2020年4月から適用となります)。


 しかし、ワークライフバランスを推進するはずの働き方改革のなか、一部の職種においては、年間1920時間、月の平均に換算すると160時間までの時間外労働を容認する方向で、厚生労働省が調整しているとのニュースが発表されました。


 わかりやすくするために計算してみると、単月の時間外労働時間160時間とは、週休2日の場合1カ月に労働する平日が21日となるので、毎日約7時間30分の残業となります。9時から業務開始の場合、就業8時間+昼休み1時間+残業7.5時間で、午前1時30分まで働くことになります。1カ月間休みなく働く場合は、月に30日間働くとして毎日約5時間20分の残業で、午後11時20分までとなります。


 この一般的労働者よりも長時間残業が容認された職業は、「医師不足の地域や診療科に勤める医師たち」です。理由は、患者や地域医療への影響を考慮したためとのことで、厚生労働省は本年3月末までに規制の内容をまとめることにしています。


 そもそも厚生労働省は、時間外労働時間は月に45時間を超えると健康に影響が出始め、80時間以上では健康障害のリスクが増加するとして、平成18年から長時間労働者に積極的に医師面談(過重労働面談)の受診を勧奨しています。


●医療過疎地の医師不足は悪化の懸念


 月160時間までの時間外労働が許容されるのであれば、残念ながらここから推測される時間外労働と健康に関することは2つです。


1.時間外労働時間が80-100時間を超えると健康障害リスクが高まるが、一部職種においては、健康障害があって構わない。


2.そもそも時間外労働時間と健康障害リスクには、いっているほど相関はなく、月160時間までの時間外労働も健康被害はない。


 私も一人の医師として、このような働き方改革には疑問を感じずにはいられません。また、医療過疎地における医師不足事情は、このような労働環境を理由に、さらに悪化することを懸念します。


 同じ働き方改革のなかで、終業時間から始業時間までに11時間は空けて最低限の休息時間を確保するためのインターバル制度も提案されています。が、医師不足の地域や診療科に勤める医師たちに関しては、インターバル時間は7.5時間しかなく、仕事の前後に1時間ずつの食事・通勤・身支度やシャワー時間を設けると、睡眠可能な時間は毎日5.5時間となり、世界一短い日本人の平均睡眠時間6.5時間をさらに更新することになってしまいます。


 私は産業医として通算1万人以上の働く人と面談をしてきました。その経験から申しあげると、時間外労働が40時間でも健康障害を起こす人もいますし、120時間でも元気な人もいます。


 誤解を恐れずに言えば、時間外労働が多ければ「疲労」がたまります。それが健康障害につながるか否かは、個々人の体力や気力、許容度、やりがい、やらされ感、自己成長の実感や上司同僚からの承認等、残業時間以外に複数の要素があることを感じています。


 さらに、同じ働き方改革のなかで、有給休暇を最低でも年5日間は取らせることも法律で定められました。時間外労働の上限をどこまで伸ばせるかだけよりも、それと同時に、時間以外の要素のことを議論したり、有給休暇をどれだけ増やすか、強制的にするか、いっそのこと3カ月連続勤務し1カ月間連続休暇などの勤務形態を検討したほうが、まだ少しは有給休暇に希望をのせて、忙しいなかでも僻地医療に勤しむ医師たちも「夢」をみることができるのではないかと考えずにはいられません。
(文=武神健之/医師、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事)



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