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ホンダ、際立つ“N-BOX依存”戦略…日本一売れるクルマの“光と影”

  • 2019年 02月12日 10時00分
  • 提供元:Business Journal
ホンダの「N-BOX」(「N-BOX|Honda」より)

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ホンダの「N-BOX」(「N-BOX|Honda」より)

 軽自動車は売れているカテゴリーだけに何かと話題も多いが、日本一売れ続けている乗用車である本田技研工業(ホンダ)「N-BOX」が2018暦年締め年間販売台数でも24万1870台を販売(全軽自協/全国軽自動車協会連合会の統計より)して“日本一”の座についた。


 注目すべきは、軽自動車で販売2位のスズキ「スペーシア」との約10万台という差である。軽自動車は排気量やボディ寸法などの規格が厳しく、性能面や全体の見た目などはライバル車同士ではほぼ横並びとなる。つまり、N-BOXのライバルとなる、スペーシア、ダイハツ工業「タント」、日産自動車「デイズ ルークス」は、見た目の細かい違い以外はほぼ“同じクルマ”と見られてもおかしくないほど似通っている。


 そして、そのなかでも“N-BOXキラー”といってもいいほどキャラを近づけてきたスペーシアと、年間で約10万台、月販台数にして約8300台も差がつくものなのか? という素朴な疑問は、新車販売事情に詳しい人の間で話題となっている。


 N-BOXは17暦年では2位のタントに約7.7万台、16暦年でも2位のタントに約8万台の差をつけているので、“それが実力”といわれればそれまでだが、ちなみに登録車で18暦年締め販売台数ナンバー1の日産「ノート」と2位のトヨタ自動車「アクア」の差は約1万台(自販連/日本自動車販売協会連合会の統計より)となっている。


 軽自動車の通称名(車名)別販売台数18暦年締め2位のスペーシアと3位のデイズシリーズ(ルークスも含む)の差は約1万台、3位デイズシリーズと4位タントの差は約5000台、4位タントと5位ダイハツ「ムーヴ」シリーズ(キャンバス含む)の差は、わずか662台となっている。


 完成度や人気が高く、ホンダの強固な販売ネットワークで販売していることを差し引いても、2位スペーシアとの10万台差を単に“N-BOXの実力”と片付けてしまうのは、やはり違和感を覚えてしまう。


 特に軽自動車の世界では、販売台数の積み増しのためにディーラー名義などでの自社登録(軽自動車は届け出)を行うことが、人気モデルや販売台数を競っているモデルでは恒常的になっている。もちろん、一般消費者への販売台数がある程度以上なければ、というよりは人気車と呼ぶにふさわしい実績がなければ、自社登録で販売台数の上積みをしたところで販売ランキング争いに参加はできない。


●新車販売での“N-BOX依存”が際立つホンダ


 考えられるのは、軽自動車ブランド別販売トップ争い、つまり“SD戦争”を強く意識するスズキとダイハツはN-BOXの車名別販売台数1位死守の動きにはあえて付き合わず、ブランド別でのトップ争いのために自社登録もいろいろなモデルに振り分けて行っていたということだ。ホンダはもともと軽自動車のラインナップ数が少なく、軽自動車総販売台数でスズキやダイハツになかなか太刀打ちできないので、あえて通称名別トップに固執、つまりN-BOXの販売を強化しているのではないかとも考えられる。


 それにしても、ホンダの新車販売におけるN-BOXの依存度は際立っている。全軽自協の統計を基にホンダの乗用軽自動車におけるN-BOXの販売比率を計算すると、約74%となった。そして、自販連統計と全軽自協の統計を基に計算したホンダの登録車と軽自動車の合計販売台数における軽自動車の比率は約50.4%となった。前述したように、ホンダの軽乗用車販売の約74%がN-BOXということを考えると、軽自動車であるN-BOXへの販売依存度がホンダ全体の国内販売ではかなり高くなっているといえよう。


 軽自動車は薄利多売が大前提であり、新車販売のなかでも利幅が少ないことで知られている。そのため、ここのところスズキやダイハツでは登録車、特に小型車の販売も積極的に行っている。自販連統計を基にスズキとダイハツの18暦年締めでの登録車の販売台数を17年暦年締め実績と比較すると、ダイハツが125.5%、スズキが118.8%となっており、前述の事情を裏付けるような結果となっている。


 薄利多売のなかで販売激戦区となっている軽自動車販売にのめりこみ過ぎればディーラーの収益を圧迫してしまうので、その意味でも登録車もバランスよく販売していきたいとするのがスズキやダイハツの戦略となっている。しかし、ホンダはひたすら軽自動車(というよりはN-BOX)の拡販を推し進めているように見える。これについて、業界の事情通も「なかなか理解しきれない部分がある」と語る。


 軽自動車には維持費の安さなどの経済性を強く意識するユーザーも多い。そのため、仮にメーカー系正規ディーラーで新車として購入しても、割高イメージの強いディーラーでのメンテナンス料金を嫌い、街の格安車検業者や顔の利く整備工場、ガソリンスタンドにメンテナンスを任せることも多い。そうした事情から、軽自動車販売が増えると、今やメーカーが新車販売自体よりも収益面で重視するメンテナンス部門の収益を圧迫することにつながりやすい。


 スズキやダイハツとホンダでは、業販店を通じた新車販売比率(業販比率)に違いがある。業販店とは、新車販売において提携関係を結ぶ整備工場や中古車専業店のことで、それらからの紹介や委託販売による業販比率がスズキやダイハツは高く、ホンダは低いとされている。


 業販比率が高ければ、販売した新車のけっこうな割合が紹介先でメンテナンスを受けることになる。もともと、特に軽自動車では業販比率の高いスズキやダイハツでは正規ディーラーへの入庫率は高くはなかったようだが、収益改善の一環として、正規ディーラーでの販売機会が多く、そのままメンテナンス入庫も期待できる登録車の販売にも力を入れているのである。


 もともと登録車もよく売れていたホンダ系ディーラーでは、ホンダの登録車ユーザーの軽自動車への乗り換えも目立ってきている。さらに、大きめの店舗が多いこともあり一般管理費もかなりかかるため、メンテナンス入庫率の減少傾向はかなりの痛手になっているとも聞く。


 おそらく、18事業年度締めでもN-BOXが日本一売れている乗用車になることはほぼ間違いないだろう。“あらゆる意味で売りやすい”からというわけでもないのだろうが、N-BOXが販売トップを守り続けているその姿を見ると、心配事ばかりが浮かんでしまう。しかし、それがよけいなお世話であってほしい。
(文=小林敦志/フリー編集記者)



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