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【襲来!新型コロナウイルス】「世界最大の対策」と豪語する安倍首相の2次補正予算案 「ふくらし粉の演出」と主要紙が酷評するわけは?

  • 2020年 05月28日 19時45分
  • 提供元:J-CAST
1次補正予算の「10万円給付」がまだ届かないところが多い

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1次補正予算の「10万円給付」がまだ届かないところが多い

「世界最大の対策」と安倍晋三首相が豪語する、新型コロナウイルス対策を盛り込んだ政府の2020年度2次補正予算案が、5月27日に閣議決定した。

しかし、主要新聞には「ふくらし粉」で膨れ上がった「演出予算案」という辛口の論調が目立つ。いったい、どういうことか。主要新聞の5月28日付朝刊と、ネットの声から読み解くと――。


医療従事者には慰労金10~20万円、芸術家には150万円

2次補正予算案の主な支援策のポイントをまとめるとこうなる。


(1)医療従事者への支援:コロナ患者を診療した病院には1人20万円、それ以外には10万円の慰労金の支給。

(2)休業する従業員の補償:企業が従業員に支払う休業手当を補助する「雇用調整助成金」の1日当たりの上限を8330円から1万5000円に引き上げる。複雑な手続きや自己負担を理由に申請しない企業が多いため、従業員が直接申請できる制度を創設、ハローワークで申請すれば月額33万円を上限に賃金の約8割を支給。

(3)中小企業や個人事業主の支援:「家賃支援給付金」を新設、1か月の売り上げが1年前の半分以下になってことを条件に、1か月当たり最大100万円を6か月分支給。

(4)フリーランスの支援:「雑所得」「給与所得」で税務申告しており、ある月の収入が前年同月の半分以下になった場合、100万円を上限に減収分の1年分を支給。

(5)ひとり親支援:低所得者向けの児童扶養手当などを受け取っている世帯に、5万円の「臨時特別給付金」を支給。子どもが1人増えるごとに3万円ずつ加算。児童扶養手当を受け取っていない世帯でも、コロナ禍で大きく減収した世帯には5万円を給付。

(6)困窮学生の支援:家計収入が急減した学生に、住民税非課税世帯は20万円、それ以外は10万円支給。また、大学が授業料減免制度を導入した場合、一定の割合の補助金を大学に支給。

(7)学習支援のため学校に補助:家庭学習支援などのため公立小中学校の教員約3100人を増やす。そのため1校ごとに小規模校100万円、大規模校200万円、高校や特別支援学校に300万円を支給。

(8)資金繰り支援:売り上げ減少の企業に、実質無利子・無担保で政府系や民間金融機関が融資する制度を拡充する。融資の上限は、日本政策金融公庫から借りる場合は3億円から6億円に、民間から借りる場合は3000万円から4000万円に引き上げる。

(9)困っている舞台芸術家・スタッフ・スポーツ関係者支援:最大で150万円支給。複数の個人や小規模団体が公演を行う場合は、最大1500万円まで支援。文化芸術団体が収益力強化につながる事業に取り組む場合は、2500万円まで支援。

このように、さまざまな対策が盛り込まれている第2次補正予算案だが、主要各紙がまず指摘したのは、安倍晋三首相の「大言壮語」に対する批判だ。


安倍首相は5月27日、官邸で与党幹部を前に「2次補正予算案は1次補正と合わせて230兆円を超える。GDP(国内総生産)の4割にのぼる空前絶後の規模。世界最大の対策だ」と大見えを切った。


しかし、それは「ふくらし粉」だらけの演出だというのだ。


日本経済新聞「ふくらし粉でふくらませた演出だ」

そう指摘するのは、日本経済新聞「2次補正透ける規模優先 事業規模117兆円 政府支出は33兆円」である。


「2次補正のうち『真水』は国費などとして計上された33兆円程度だ。事業規模は財政支出が呼び水となった動く民間資金を含めた額。規模を大きく見せる演出に使われやすい」

と一刀両断。そして、問題は別のところにあるという。


「問題はこうした『額面ありき』で積み上げた予算に実務が伴っていないことだ。『ノウハウを持った人材がまったく足りていない』。政府が2次補正の目玉として用意した企業向け(無担保・無保証の)資本注入枠。劣後ローン(編集部注:政府系金融機関からの一部借り入れを資本とみなせるローン)も含めて12兆円の予算額が伝わると、現場を担う政府系金融機関から悲鳴があがった」

「無担保・無保証で融資する」というと聞こえはいいが、無担保・無保証の資本性ローンは、リスク管理手法が普通の融資とは異なり、かなり危険で取り扱いが難しい。政府は夏までに体制を整える計画だが、企業の資金調達が銀行融資に偏る日本には、そもそも無担保・無保証ローンを扱える人材が非常に少ないのだ。


朝日新聞「政府2次補正予算案決定 対コロナ読み違え後手」も、大急ぎでまとめた「打ち出の小づち」の巨額予算だと批判する。


「与党内では『コロナでこけたら選挙に勝てない』と焦りの声も上がった。不満に押される形で、与党と関係団体との調整では額が積み上がり、与党議員からは『ごねれば出る打ち出の小づちみたいだ』との声ももれた。野党から『知恵もなく、ただ積んだだけ』との批判もあがる。

ある自民党議員は2次補正の中身について『困っている人たちの補償ばかりで、本来は1次でやっておく話だ』と失敗を認める。2次補正予算案が成立し、執行されるのは6月中旬以降になる。大急ぎでまとめただけに、執行が滞る懸念も残っている」

そうでなくても、1次補正で決まったさまざまな対策、たとえば「国民1人あたり現金10万円給付」「アベノマスク」「雇用調整助成金」などの事務手続きが、まだ大混乱のさなかで、国民に行き渡っていないのだ。


産経新聞「届かぬ資金 中小不安 2次補正、追加対策柔軟運用求める声」は1次補正で打ち出された支援策が、まだ困窮している中小企業にまったく届いていない実態を報告している。


「観光施設の予約サイトを手がけるベンチャー企業の経営者は今月(5月)、日本金融公庫の追加の借り入れを相談したところ、条件を突きつけられて断られた。経営者は結局、ベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタルに追加出資を求め、資金繰りに走っている。民間の調査機関によると、(資金繰りに困っている)創業初期のベンチャーのうち56%が『要件に当てはまらない』ことを理由に、政府や自治体の支援策の申請を断念した」

朝日新聞「1次分の不満を穴埋め 遅い給付いまだ届かず」も、1次補正の対策がまったく届いていない現状を報告している、


「働き手を守る雇用調整助成金も手続きが大変だ。相談件数は38万件を超えるのに申請は5万1000件、支給決定は2万7000件(5月26日現在)。厚労省はオンライン申請も始めたが、1時間でシステムトラブルがわかり受け付けを停止した。

個人事業者向けの持続化給付金もスムーズではない。経産省では申請から2週間で支払えるとしていたが、(1か月後の今も)多数の企業が手続きを待つ。札幌市の保険代理業者は、コールセンターに100回以上電話したがつながらなかったといい、『給付のめどすらわからず本当に困っている』という」

10万円給付さえまだなのに現場はさらに大混乱

こうした1次補正の支援さえ受けられない人が多いのに、2次補正の対策が加わっては現場の窓口が大混乱するのではないかと危惧する論調が目立った。


日本経済新聞「10万円給付や雇調金 執行、スピード感欠く」は、こう訴えた。


「家計向けの10万円給付は事務をめぐる混乱で、多くの自治体がオンライン申請を中止。郵送受付での給付を始めた自治体は5割にとどまる。困窮世帯救済は待ったなしだが大半に支援が届いていない。雇用調整助成金も、申請手続きが煩雑なため、申請を断念する中小・零細企業もある」

として、手続きの大胆な簡略化とスピードアップを求めている。


また、2次補正予算案の中には、最初から使い道を明記していない「予備費」が10兆円も計上されている。これには賛否両論があった。読売新聞「国民の不満緩和に腐心 迅速対応に予備費10兆円」は、


「あらかじめ使い道を決めない予備費は、内閣の責任で支出に充てることができる。(国会)閉会後に新たな経済対策を打つことになっても、安心というわけだ」

と称賛している。一方、日本経済新聞「予備費10兆円計上 使い道に不透明さ」は、


「予備費は災害などの不測の事態に備える資金で、あくまで例外的な扱いだ。10兆円もの巨額を、国会審議を経ずに自由に使う事態は想定していない。国会のチェックがなければ無駄な予算に巨費が投入される懸念が膨らむ」

として、4月の緊急経済政策で、自民党農林部会から和牛を購入する「お肉券」構想が出た例を挙げた。結局、世論の批判から見送られたが、事実上の衣替え政策の「国産牛肉振興予算」が1次補正に入った。そういうことを平気でやる安倍政権だから、信用ならないというのだ。


もう一つ、今回の補正予算で問題視されているのは、巨額な赤字国債の発行により、財政の健全化がいっそう遠のいたことだ。毎日新聞「遠のく財政健全化」が、こう警鐘を鳴らす。


「当初予算と1次補正、2次補正を合せた2020年度の新規国債発行額は過去最大を更新し、90.2兆円に膨らむ。国債残高は20年度末で1000兆円に迫る見通しで、一般会計税収(約64兆円)の約15倍に相当する。コロナ禍で企業業績にブレーキがかかり、家計の収入も減って消費が伸び悩み、当面は大幅な税収増は見込みにくい。巨額な借金のツケは将来の国民負担となる」

として、2025年までに財政健全化の指標となる基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字化する目標はどうなったのか、と訴えている。


エコノミスト「将来の天文学的な赤字財政に禍根を残す」

エコノミストたちも辛口のコメントが多い。


木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストは、日本経済新聞でこう語った。


「企業個人への支援はいまだ道半ばだ。私は4~9月で消費が大きく落ち込むと見込み、約43兆円の支援が必要と推定した。第1次補正予算と2次補正での企業向け支援は計15.3兆円程度で、必要推定額の半分以下だ。もっと対策費を計上してよかった」

土居丈朗・慶応大学教授は、同じく日本経済新聞で財政健全化の問題を指摘した。


「緊急事態とはいえ、予算のばらまきは避けるべきだ。非常時で財政出は一時的に拡大するが、政府が掲げる基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の2025年度黒字化目標の旗を降ろすべきではない。新型コロナ終息後に財政状況を改善していくために、財政規律を維持することが大事だ。20年度予算でも新型コロナ拡大で不要になった事業があるのだから、それらをきちんと削減するといった取り組みが必要だ」

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは読売新聞で、スピード感の欠如を問題視した。


「1次補正で足りていなかった家賃補助制度や休業手当を受け取れない人への給付金などが盛り込まれたのは評価できる。一方、1次補正に計上された現金10万円の一律給付など、すでに決まった支援策がいまだに行き渡っていないのは問題だ。現時点で財政出動を惜しむべきではないが、将来的な財政赤字も課題だ」

「普通に税金を払っている勤労者にも支援を」

ネット上では、今回の補正予算案の支援から漏れた人々から怒りの声が相次いでいる。医療関係者でもない、学生でもない、飲食店経営者でもない、中小企業・個人事業主でもない、芸術家でもない...... 多くの一般の勤労者だ。現金10万円給付をもう一度求める声が非常に多かった。


「消費税減税と国民への一律給付金の2回目を支給すべきです。100年に1度の大惨事を乗り切るには一番重要な事です」

「生活が一変してみんな苦しいです。主人は残業も夜勤もなくなり、基本給のみです。子ども3人が中高校生になり、児童手当もなく、お金がかかる時期です。なぜ大学生だけ助けるの? 私も保育士で仕事をしていますので、何とか今のところなっていますが、もっと納税者に対して平等に救済措置はないのですか? マスクも10万円の一律給付金は届きません。6月1日付の支払い期限の付いた納税通知書はちゃんと届きました。届く順序が逆じゃないですか?」

「芸能人への支援も手厚いですね。節税できる芸能人や自営業の方々に比べて、税金キッチリ取られるサラリーマンには何の補償もないのでしょうか。私の場合は非正規です。部署内の非正規雇用者の半分は来月末でクビになると聞いています。これから本格的な失業者は増えるでしょう。飲食業、大学生、芸能人にお金を出すなら、一般企業でも正規雇用と同じように働き、税金を引かれてきた私たちのような人も支援をしてほしいです」

「芸術家個人に150万円支給は納得がいきません。何をもって芸術家と決めるのでしょうか。もっと困っている人は大勢いるのに。芸術団体が政府に陳情したから? メディアへの発言力があるから? 政府もウケ狙いはやめて、無名の私たちにも目を向けてください。支持率どんどん下がりますよ。欲しがった者勝ちのバラマキは止めて下さい」

今後の2次補正予算の対策が、いつ届くのだろうかと不安になる人が多い。


「対策にも良いものがあるが、いつ給付や補助されるかが問題。知人の公務員が、土日も返上して他の課からも応援もらって終電近くまで作業しているといっていた。役所から送られてきた給付金申請書が入った封筒を見たとき、手作業で一生懸命やっている姿が目に浮かんだ。たぶん、3密を避けながら人海戦術で、印刷、三つ折、封筒づめ、宛名貼り、確認作業をやっているのだよね」

「政治家は予算案を決めたら仕事が終わりだと思っている。国民に渡すお金が手元に届いた時に初めて救済したと言えるのだが、それは地方自治体に丸投げ。そして役所は混乱。結果、なかなかお金は支払われない。アベノマスクから始まった負の連鎖。マスクまだ来ないけど、役所の皆さん、もうマスクはいいよ。もっと住民のためになること、頑張ってやってください」

(福田和郎)


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