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ASKA「今しか歌えない歌を」コロナ禍での“新しいリアル”を語る【ロングインタビュー】

  • 2020年 09月28日 18時00分
  • 提供元:ウレぴあ総研

9月の3週連続配信リリースに続いて、10月21日(水)には昨年から今年にかけて行われたツアーの模様を収めた『ASKA premium ensemble concert -higher ground- 2019>>2020』の映像作品がリリースされる。


さらに、11月8日(日)にテレビ東京全国6局ネットで、このツアーに密着したドキュメンタリー番組が放映されることとなった。積極的なリリースにメディア展開と、このコロナ禍と言われる時代に、ASKAという稀代のシンガーソングライターの存在感が増している。


音楽、そして時代との距離感を彼の視線で見つめてみると、そこにはまったく新しいリアルが浮かび上がってくる――。


――『ASKA premium ensemble concert -higher ground-』は、ASKAさんの歌とバンド、そしてbillboard classicsというストリングス・チームの三位一体の形が最大の特徴ともいえるライブでしたが、ここに行き着くまでの経緯を教えてください。


ASKA:僕が音楽活動を再開したときに最初に声をかけてくれたのがbillboardさんで(※2018年『ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-』)、ま、ああいう状態のときに声をかけてくれたことに僕は一生の恩を感じています。


その次のツアーでバンドツアーに戻り(※2019年『ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ - 』)で、また声をかけていただいたのが、今回映像作品となる『ASKA premium ensemble concert -higher ground-』だったんですね。


前回(2018年)からタームが近かったことは気になりました。でも僕としてもまたご一緒したいという気持ちがあった。何か面白いものが作れないかなって考えたんですよ。そのときに、billboard classicsの華やかな女性チームがステージを彩って、バンドと一体になり、さらにそれでツアーをする、という形が見えたんです。こういう形でストリングス・チームを引き連れて全国ツアーがやれるなんてことは考えたことがありませんでした。


――単発でやるのとツアーでやるのとでは何もかもが違いますもんね。


ASKA:そうなんです。それで、彼女たちはそもそもクラシック畑の人たちなので、音を加工するのに抵抗があるんじゃないかと思ったんです。一人一人の楽器にピックアップマイクを付けさせてもらうことをダメもとでお願いしてみたんですよ。


そしたら「私たちはロックもポップスも聴いているので抵抗はありません」と、即決してくれたんです。さらにもうひとつ。ライブはやっぱりお客さんが喜んでくれてこそのライブなので、ステージ上でのパフォーマンスもお願いをました。「よろこんで!」って。もうすべてがうまくいきました。だから演出もしやすかったですし、歌を歌っていて本当に楽しかったですね。


――ASKAさんにとっても得るものの大きかった体験だったわけですね、


ASKA:何よりストリングスがこれほどステージで映えるとは思ってもみませんでしたから。やっぱりピックアップマイクを通したストリングスの存在感は想像を超えていました。


――かつそれが、バンドサウンドとの融合を果たしているわけで、それは口で言うのは簡単ですが、なかなかハードルの高いことですよね。特にライブという現場においては。


ASKA:ツアーにおいて一緒にまわるグループは家族じゃないとダメだと思っているので、今回は大所帯でしたけど本当に家族となって各地をまわれました。残念ながら残り2本が延期状態となっているんですけど、グループみんなで「早くやりたいよね!」ってメッセージ交換しています(笑)。


テーマは毎回『ASKA』であればいいと、ある意味吹っ切れた

――選曲の面で、ストリングスとバンドが一緒になるというところで、いい意味での制約というのはあったのでしょうか?


ASKA:それはありましたね。この楽曲はストリングスがあるからこそ生きるよねっていう曲をあえて選んだセットリストになっています。


――特にポイントとなった曲、というのはありますか?


ASKA:いや、すべてがポイントですよ。そういう意味では、ツアー全体に対しても同じことが言えますね。ツアーをやるときって、ニューアルバムを引っ提げて、というのが基本の流れじゃないですか。僕はありがたいことに40年以上やらせていただいていて、『40年のありったけ』っていうツアーで自分の総決算をやったときに見えるものがあったんですよ。


これから先のツアーは、41年、42年、43年……以降ずっとその時々までの『ありったけ』なんだと。自分がそれまで作り出してきた曲をツアーごとに一番いい形でセットして各地をまわるっていうやり方がベストだなと思っています。


だからこれでツアーのテーマを毎回考えなくてもいいんだなって(笑)。テーマは毎回『ASKA』であればいいんだって、ある意味吹っ切れましたね。


――その流れであえてお訊きしますが、今回映像作品としてリリースされるツアーには、『higher ground』というタイトルが付けられています。ここに込められた意味は?


ASKA:これはですね、CHAGE and ASKAの時に作っていた曲なんですよ。意味としては、“高みを目指す”っていうことで、言葉としては割合誰もが使いたがるものではありますよね。


何においてもそうだと思うんですけど、例えばアルバムタイトルを付けるのに、この曲が一番意味を持っているからアルバム全体のタイトルにしようっていう人はそんなにいないと思うんですよ。


やっぱり目と耳から飛び込んでくるインパクトでアルバムタイトルって決まってくるものなんです。だから今回の『higher ground』というタイトルもそうですね。耳に飛び込んでいける音を持った言葉に感じました。それと『higher ground』という曲をこの形でやりたいという思いがありました。


――そこはどうしてですか?


ASKA:前にアンプラグドを代々木第一体育館でやったときに、『RED HILL』と『higher ground』がセットリストの中でもすごく喜ばれたんですよね。そのときは、弦はカルテットでした。今回は15人のストリングスと、さらにバンドがいて、ものすごく重厚な音がイメージできました。


――このツアーの映像収録に関して、今から考えるとちょっと信じられないようなミラクルが起きましたよね。というのも、最初の予定では、最終公演の熊本での収録を考えていたと。ですが実際には2月11日の東京文化会館大ホールの模様が収められました。


ここの変更の意図について、これは新型コロナウイルスの感染が広がっていった状況と関係があるんですか?


ASKA:ないです。もともと熊本は特別公演で、1日増やしたんです。今おっしゃったように、シューティングを最終日の熊本にしようとしていたんですけど、特別公演の意味合いが何かと言うと、2016年の震災です。


2011年の東北の大震災は、何かしら今も復刻向けて日本中が応援しています。熊本も大震災でした。僕は、同じ九州の福岡で隣の県ですからね。東北の陰に隠れてはならないと感じていました。


もちろん、熊本には友人が多いのもあります。1ツアーで頂いた「義援金」「募金」と言っても、「被災」という言葉の前ではお手伝いにしかなりませんが、気持ちは届けられると思いました。


ツアーの何箇所かで公開リハーサルを有料で行い、そこで集まった収益、そしてホールに設置した募金箱を義援金として最終日に届けるというのが目的だったんです。そういう特別な思いがまずはある中で、そこに映像がついてきてしまうと、チャリティーやボランティアという部分にどうしても焦点が当たってしまうんじゃないかと。そうなると行ってきたことの意味合いが変わってしまいますよね。


そこで、映像収録は東京にしようと急遽変更しました。その東京を最後にツアーは「新型コロナ」で中断してしまいました。本当に、やっておいてよかったですよね。


――本当にそうですね。


ASKA:2月11日の東京公演を収録していなかったら、もし、このままツアーが中止となれば、今回のツアーは記録に残ってなかったっていうことになりますから。


音楽業界のチャリティーへの意識について思うこと

――先ほどチャリティーのお話がありましたが、そういったものへの意識は以前からあったんですか?


ASKA:89年と91年に半年ずつ僕はロンドンに住んでいるんですけど、そのときに海外のアーティストと日本のアーティストとの違いを一番感じたのは、チャリティーにかける思いとかボランティア精神というものでした。向こうの方々は本気で取り組んでいますよね。しかもインターナショナル規模で。


ところが当時、日本ではアーティストがチャリティーやボランティアには手を出してはいけないと言われていたんです。偽善というふうに見られるとマイナスにしかならないから、そこは触ってはいけないっていうのが業界の常識だったんです。でも僕は2回のロンドン生活によって意識改革が行われたんですよ。


それで、ロンドンで『GUYS』(1992年)のレコーディングをやっているときに、スタッフに話をしました。日本のアーティスト、引いては音楽業界のチャリティーへの意識の低さはおかしくないか?って。


ちょうどその時期っていうのは、CHAGE and ASKAというのはものすごく盛り上がっていたので、僕たちが率先して取り組めば少しは変わるんじゃないかと。


CHAGE and ASKAがチャリティーをやることが今さら売名行為だなんて言われないだろう、それでも言われるんだったら、“史上最大の売名行為”ってスローガンを掲げてやってやろうよって強く主張しました。そこからやり方を探していったんです。


その中で、セーブ・ザ・チルドレンのことを知り、音楽業界だけではなくてもっと大きな活動にしたかったので一般企業とも組んで、大々的に広告展開などをしていきました。


その頃からチャリティーやボランティアへの意識というのは僕の中には根付いていて、だから今回熊本に向けて義援金を募るために公開リハーサルを有料で行うというのはまったく迷うものはありませんでした。


――ASKAさんがそこまでチャリティーに対して強い思いを持たれる、その原動力は何ですか?


ASKA:やっぱりここまで好きなことを仕事としてやらせていただいて、もう十分幸せな思いをさせてもらっているので。自分が音楽活動をやれているもうひとつの喜びっていうのは――これ、みなさんそうだと思うんですけどね。


口にできない、行動できないだけで――やっぱり世の中のため、人のために役立ちたいということが根本にあるのは当然のことだと思います。


ただそれをどう表現していいのか、どうアプローチしたらいいのかわからないっていうだけのことで手をつけない人が多いのだと思います。僕は幸いにも、そういうことをやって来れましたから、これから先もずっとやらせていただきたいと思いますね。


――欧米のミュージシャンと日本のミュージシャンのチャリティーに対する温度差というのは、今はどのように感じてらっしゃいますか?


ASKA:ずいぶん変わりました。今は日本のミュージシャンの方々も積極的に取り組まれていますよね。新しいNPOができると、すぐにアーティストと組んで行動を起こすような、そういう文化が日本でも出来上がったので、今では普通になりましたよね。


まさに今回の新型コロナウイルスに対してもそのような動きは様々に見られましたから。その上で大事なことは、チャリティーやボランティアというのは、無理をしてやるものではないという大原則ですね。できる人ができるときにやったらいいんです。


たとえばこのタイミングはどうしてもできないけど、落ち着いたらしっかりやらせていただこうで、全然構わない。そうした意識レベルにおいて日常になることで初めて文化になっていきますから。


今僕らは境界線のど真ん中にいる

――ツアーの話に戻りますと、新型コロナウイルスの状況というのはどのように感じていましたか?


ASKA:僕はデータとか知識よりも肌で感じることの方が大きくて、わりと早い段階でツアーを延期することを伝えていたんですよ。もしかしたら思っている以上に世の中は大きな渦に巻き込まれるかもしれないっていうことで。事実、そうなってしまったわけですけど。


これから先のことを僕の感覚で言うなら、来年の秋まではライブ・エンタテインメントは成立しないだろうなって思っています。もちろん国のガイドラインに則って、いろいろなやり方というのはあるんでしょうけど、それはあくまで緊急の方策であって、僕らアーティストやお客さんのエモーショナルな部分を引き出せるかって言ったら、やっぱり厳しいでしょうから。


僕はコンサートにおける最大の演出はお客さんだと思っているので、お客さん同士がお客さんを確認しあって、この中に自分がいる喜びを感じるのがライブですから。


自分が好きなアーティストを好きな仲間と同じ空間にいるんだって体感するのが最大の喜びですからね。その状態まで回復するには、とにかく「忍」ですよ、みんなが。そういう中にあっても僕の仕事は歌うことなので、音楽は絶やさず作っていこうかなと思っていますね。


――クリエイトする音楽に今の状況は影響しますか?


ASKA:それはすべてにおいてあるでしょうね。だから今までの状態を基準にした変化形として捉えるんじゃなくて、新しいものとして動いていかないといけませんよね。今までのものをつなぎ合わせたような意識だけだとすべてにおいてダメになるでしょうね。間仕切りはもうしっかり行われたので。


ここからは新世界だと思わないと。そこで生き残っていける人と生き残っていけない人の違いは、その間仕切りを頑張って越えようとする人ではなくて、そこが新しい世界なんだという区別がついているかついていないか、そこだと思うんですよ。


だから、できる歌詞や音楽が変わってくるのも当然なんですよ。やっぱり希望や愛や夢を歌わないと楽曲として成立しませんね。歌の中に恨みを持っているような楽曲っていうのはもうまったく意味を成さないですから。だから、人が気持ちを開くようなものが作品とならなければいけなくて、これから先もっとそうなっていくんでしょうね。


ただ、今僕らは境界線のど真ん中にいるんで、そこを強調して歌うと、すごく無理して空元気で歌っているようにしか見えないじゃないですか。と言って、この境界線を気にせず、今までと何も変わらないように歌っていようっていう意識で作品づくりをしていると、自分の立っているところが見えない作品になってしまう。


ですので、今回配信リリースした3曲(9/11『幸せの黄色い風船』、9/18『自分じゃないか』、9/25『僕のwonderful world』)については、もう境界線のど真ん中に立っているんだから、今しか歌えない歌を歌えばいいと。それを今回の3曲のテーマにしたんですよね。


ここにいるんですから、みんな。だったら自分が生きた記録として、ここにいるんだって歌を作っておこうと思って。そこから時代をくぐっていくごとにまた何かが見えてくるんだと思います。


2020年9月11日より3週連続配信リリース

・9月11日(金)0:00 『幸せの黄色い風船』
・9月18日(金)0:00 『自分じゃないか』
・9月25日(金)0:00 『僕のwonderful world』
・10月4日(日)MV生配信


2020年10月21日(水)リリース

『ASKA premium ensemble concert -higher ground- 2019>>2020』
品番:DDLB-0016 レ―ベル:DADA label


★オフィシャル通販先行あり、詳細は公式サイトをご覧ください。


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